貴財団の多大なるご支援のもと、2026年9月6日から11日にかけて、米国ペンシルベニア州ピッツバーグのDavid L. Lawrence Convention Centerで開催された国際会議「Applied Superconductivity Conference (ASC 2026)」に参加し、口頭発表を行った。 ASCは、超伝導材料およびその応用技術に関する分野において世界最大級の国際会議であり、2年ごとに米国で開催されている。欧州や米国、中国、日本、韓国をはじめとする世界各国の大学・研究機関から多くの研究者が参加する。さらに近年は、核融合スタートアップの台頭を背景に、核融合関連企業や超伝導線材メーカーなど、産業界からの参加者が著しく増加してきている点も特徴である。
今回は1,000人を超える発表者のもと、222のセッションにおいて1,500件以上の口頭およびポスター発表が行われた。本会議では、核融合に代表されるエネルギー応用をはじめ、超伝導量子コンピュータなどの量子応用、超伝導の基礎物性、新規材料の開発、さらには冷凍機や医療機器における応用技術など、極めて幅広いテーマが取り上げられ、活発な議論が交わされた。なかでも核融合に関連するセッションは会場が満員となるほどの盛況ぶりであり、核融合炉用超伝導マグネットの設計や、それに用いられる超伝導導体の性能評価、さらには構成要素である超伝導線材の開発に至るまで、白熱した議論が交わされていた。さらに、次世代を担う若手研究者を対象とした教育・交流プログラムが数多く開催されていたことも印象的であった。


私たちは、世界最高クラスの強磁場を生み出す「超伝導マグネット」の研究を進めている。超伝導とは、ある温度以下で電気抵抗がほぼゼロになる現象であり、この特性をもつ超伝導線を巻いて作ったコイルを「超伝導コイル」と呼ぶ。従来の銅線コイルでは、電気抵抗による発熱やエネルギーロスが生じるため、大電流を流すことが難しく、発生できる磁場にも限界がある。一方、超伝導マグネットは極低温まで冷却する必要があるものの、大電流をほとんど損失なく流すことができるため、従来技術では実現が難しかった高磁場を効率的に発生させることができる。
このような超伝導マグネットが生み出す強磁場は、医療・分析機器、交通、エネルギー、基礎科学など幅広い分野で利用されている。医療・分析分野ではMRI(磁気共鳴画像装置)やNMR(核磁気共鳴)装置に用いられ、交通分野ではリニアモーターカーの浮上・推進に応用されている。さらに、核融合炉の磁場閉じ込め装置や高エネルギー加速器などの大型科学装置にも不可欠であり、高磁場環境を利用した物質や量子現象の研究にも活用されている。
私たちは現在、33テスラの超高磁場を発生する無冷媒超伝導マグネットの開発に取り組んでいる。しかし、高磁場化に伴ってマグネット内部には非常に大きな電磁力(ローレンツ力)が発生し、コイルの変形や損傷を引き起こすおそれがある。そのため、強磁場を安全かつ安定に発生させるためのコイルの構造設計が重要な研究課題となっている。
本研究では、この構造設計に関係する「遮蔽電流誘起応力・ひずみ(Screening Current Induced Stress and Strain, SCIS)」と「端面含浸超伝導コイル」をテーマとして取り上げた。SCISは、超伝導コイル内部に流れる遮蔽電流によって電流分布が不均一となり、局所的に大きな電磁力が発生する現象である。この電磁力によってコイルに大きな応力・ひずみが生じ、超伝導線材の性能劣化や損傷につながるため、高磁場マグネットの性能を制限する要因となっている。一方、端面含浸とは、コイルの端部のみを樹脂で固めることで機械的に補強する構造である。この構造は従来の含浸方法で頻発したコイルの損傷を防ぐ一方、SCISによって局所的に発生する大きな電磁力を十分に低減できないという課題がある。そこで本研究では、端面含浸構造を活用し、コイル内部に発生する不均一な電磁力を打ち消すような構造を提案し、その有効性を検証した。
発表では、数値解析により提案構造を適用したマグネットの変形を評価し、従来構造では許容範囲を超えていた変形が、提案構造によって許容範囲内まで低減されることを示した。発表後には、提案したマグネット構造やその原理に関する詳細な質問に加え、構造を適用することによって生じる欠点についても議論した。これらの討論を通じて、提案構造によるSCIS低減効果だけでなく、実際のマグネットへの適用に向けた改善すべき点についても整理することができた。

発表後には、海外の研究者からSCISの低減効果や提案手法の適用性について多くの質問や意見をいただき、研究内容について活発な議論を行うことができた。昨年度の国際会議では、英語で研究内容を説明し、質疑応答を行うことに難しさを感じる場面もあったが、今回はこれまでの国際会議での経験を生かし、より積極的かつ円滑に英語で研究内容を説明し、質問にも自分の考えを交えて回答することができた。また、交流の場においても、海外の研究者と積極的に会話することで、研究に関する情報交換だけでなく、研究者同士の交流を深めることができた。
学会期間中は、海外研究者とのディスカッションやポスターセッションを通じて、最新の超伝導マグネット技術や高磁場実験の動向を直接学ぶことができた。なかでも、CFS(Commonwealth Fusion Systems)やProxima Fusionをはじめとする核融合スタートアップ、米国の強磁場研究機関による超伝導マグネットの開発・設計に触れ、その技術力の高さを実感した。特に、豊富な実験データや解析結果を設計に活用しながら、短期間でマグネットの設計・開発を進めるスピード感は印象的であり、今後の自身の研究を進める上でも参考となった。
今回の国際会議への参加を通じて、自身の研究成果を海外の研究者に直接伝え、その場で意見を交換する経験を積むことができた。特に、昨年度と比較して英語によるコミュニケーション能力が向上し、研究発表だけでなく、学会期間中の交流においてもより主体的に行動できるようになったことは、大きな成果である。さらに、海外の研究者との議論を通じて得た新たな視点や知見を今後の研究に取り入れ、より実用的な高磁場超伝導マグネットの実現に向けて研究を発展させていきたい。
最後に、本研究の発表に際しご支援を賜りました一般財団法人丸文財団様に、心より御礼申し上げます。

