国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和7年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
矢野 圭悟
(高知工科大学)
会議名
The 19th Conference of Asian Crystallographic Association 2025 (AsCA2025)
期日
2025年12月1日~6日
開催地
Taipei International Convention Center (TICC), Taipei City, Taiwan

1. 国際会議の概要

The 19th Conference of Asian Crystallographic Association 2025 (AsCA2025) は、アジアおよびオセアニア地域の結晶学に関する学会や組織を代表する国際会議であり、2025年12月1日から2025年12月6日の会期で、台湾・台北市のTaipei International Convention Center (TICC) にて開催された。AsCAは国際結晶学連合IUCrに属する4つの地域関連組織の一つとして位置付けられており、6つの主要分野 (生物学、化学、物理学、材料科学、データサイエンス、計測技術) を軸に、結晶に関する幅広いテーマの研究が発表される点が特徴である。

特に今回のAsCA2025は、台湾結晶学会と日本結晶学会が合同で開催する大規模な国際会議であった。大学や研究所による最新の研究発表に加え、多くの企業がワークショップを開催するなど、アジアを中心とした結晶学における最新の成果や技術を共有する重要な機会となった。来年度はIUCrの全体会議 (IUCr Congress 2026) がカナダで開催される予定であるため、次回のAsCAは2027年度以降の開催が見込まれている。


会議場TICCと台北のシンボルタワー

会場内の様子

2. 研究テーマと討論内容


ポスター発表の様子

今回私は、AsCA2025において「Designing 2D elastic donor-accepter type π-conjugated molecular crystals and creation of 3D optical waveguide crystal-polymer hybrid film」という題目でポスター発表を行った。本発表では、優れた発光特性と弾性機能を兼ね備えた有機分子結晶を開発し、さらに柔軟性ポリマー膜と複合することで3次元光導波路として機能することを実証した内容を報告した。有機分子結晶の多くはユニークな発光特性を示す一方で、機械応力に脆弱であるという課題がある。これに対し我々は、分子結晶の弾性に寄与する結晶構造を特定し、弾性変形を示す発光性分子結晶の創製に取り組んできました。そこで本研究では、分子間での電荷移動相互作用や不連続性水素結合を当該構造に組み込むことで、発光特性および弾性機能の更なる向上を目指した。その結果、作製した分子結晶はΦPL=0.27の黄色発光を示し、結晶末端からは導波光の放出が観測された。加えて、曲げ試験では複数の結晶面において可逆変形を示し、極めて優れた2次元弾性機能を有することを確認した。さらに、当該結晶のハンドリング性を改善するため柔軟性ポリイミフィルムと複合化したところ、結晶部が光導波路として機能し、捻るような3次元変形時にもその機能を損なわないことを実証した。本成果は分子結晶材料における光特性と柔軟性の統合を可能にし、次世代有機材料の新たな応用指針を示すものである。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

今回のAsCA2025への参加は、多国籍な研究者と成果について深く議論し、自身の研究を国際的な文脈で位置付ける重要な機会となりました。発表の場では、特に「分子結晶の弾性メカニズム」と「柔軟デバイスへの応用可能性」について多くの質問をいただきました。作用する分子間力の種類や機械特性パラメータの解釈について鋭い指摘を受け、仮説の論理的整合性を確認し、より強固なものへ昇華させることができました。また、ポリマーとの複合化によるデバイス応用まで提示した点を評価いただけたことは、大きな自信となりました。交流面では、Welcome Receptionなどのイベントにも参加し、同期の博士学生と親睦を深めました。研究への姿勢やキャリア観について意見を交換し、多くの刺激を受けました。

一方で、英語での質疑応答においては課題を痛感しました。特に、超分子構造の形成メカニズムを論理的に説明する際、細部のニュアンスを正確に伝えることができず、議論を深められない場面が多々ありました。質問の意図を瞬時に把握する能力の不足も実感し、専門的な議論を遂行する語学力の必要性を再認識しました。

本会議への参加を通じ、国際的に通用する強みと、克服すべき課題がより明確になる貴重な経験をいたしました。今回得られた貴重な学びとネットワークを糧に、今後の研究活動に一層邁進してまいります。末筆ながら、本会議へ参加するにあたり、貴財団から多大なるご支援を賜りましたことに、心より御礼申し上げます。

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