国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和7年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
楊 惠詩
(大阪大学 大学院工学研究科 物理学系専攻)
会議名
SPIE Optics and Photonics 2025
期日
2025年8月3日~8日
開催地
アメリカ、サンディエゴ

1. 国際会議の概要


サンディエゴの街並み

SPIE optics and photonicsは、光学およびフォトニクス分野における世界最大級の学祭的な国際会議で、毎年8月にアメリカ サンディエゴにあるコンベンションセンターで開催されます。

本会議は主にNanoscience, Optical Engineering, Organic Photonicsの3つに、今年からできたAstronomical Applicationsを加えた4つのシンポジウムで構成されています。今年からAstronomical Applicationが加えられたこともあり、レセプション会場には望遠鏡が設置され、月を覗くこともできました。会議の他にも光学やフォトニクスに関する最新技術や製品が展示される大規模な展示会や、学会参加者の知識やスキルを向上させるためのワークショップも開かれていました。

次回のSPIE optics and photonicsは、2026年8月23日~27日に開催予定です。

2. 研究テーマと討論内容

本国際会議において、私は2件の研究発表(口頭発表1件、ポスター発表1件)を行いました。両発表は、高速原子間力顕微鏡を用いて、光応答性材料であるアゾポリマー薄膜が光によってユニークな変形をする様子をリアルタイムで解明する研究成果に関するものです。


ポスター発表の様子

アゾポリマー薄膜は、アゾベンゼンを含有するポリマー薄膜であり、光を照射するとアゾベンゼンの光異性化反応によって薄膜表面に凹凸構造を形成します。この凹凸構造は光照射条件によって形状が変化するため、アゾポリマーは光記憶媒体などへの応用が期待されるだけでなく、光渦のような特殊な光の場の研究にも用いられており、凹凸構造を形成するメカニズムの解明が求められています。従来は、異なる照射時間でレーザー光を薄膜に照射し、変形後の凹凸構造を原子間力顕微鏡で静止画撮影することで変形メカニズムを研究していました。

本研究では、高い空間分解能(約1nm)と時間分解能(~10フレーム/秒)を両立する高速原子間力顕微鏡(高速AFM)に、光学顕微鏡を組み合わせることで、ナノスケールの光誘起反応をリアルタイム動画観察できる計測装置を開発しました。この装置を用いて、アゾポリマーの変形過程をナノスケールでリアルタイム動画撮影することに成功しました。

口頭発表では異なる偏光条件のレーザー光をアゾポリマー薄膜に照射した結果について発表し、ポスター発表では装置開発についてより詳しく発表しました。ポリマー薄膜の特性に関する質問もありましたが、装置に関する質問が非常に多く、「このような試料を計測してみると面白いのではないか」と新しい試料のアイデアも生まれました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

本学会は私にとって初の国際学会でした。他の方々の発表を聞いている中で最も驚いたことは、研究者であろうと学生であろうと発表者が皆エンターテイナーのようにプレゼンをしていたことです。私は日頃から研究室では英語で研究議論を行なっているため、英語で発表することに苦手意識はなかったものの、これまで参加したどの学会とも比べものにならないほど緊張しました。次の国際会議では、今回の経験を活かし、他の方々に引けを取らない堂々としたプレゼンテーションができるよう、より精進したいと思います。

日常会話については知らない単語も多く、英語学習意欲が更に高まりました。レストランでの注文や、交通機関での会話を通じて、英語の教科書だけでは知り得ない表現なども学習できました。また、学会が様々な名目のレセプションを企画しており、学生レセプションでは多様な国の学生達と交流しました。各々の研究内容について議論するだけでなく、各国の大学生活や研究室文化、英語の発音の違い等も知ることができ、知見が広がるとても良い機会になりました。

最後になりましたが、本学会の参加にあたり、一般財団法人丸文財団に多大なるご支援を賜りましたこと厚く御礼申し上げます。


学会パネル前での写真

令和7年度 国際交流助成受領者一覧に戻る

ページの先頭へ