国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和7年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
山本 昂市
(名古屋工業大学 大学院工学研究科 工学専攻)
会議名
42nd European Photovoltaic Solar Energy Conference and Exhibition (EU PVSEC 2025)
期日
2025年9月22日~26日
開催地
Bilbao Exhibition Centre, Bilbao, Spain

1. 国際会議の概要

EUPVSEC (European Photovoltaic Solar Energy Conference and Exhibition) は、太陽光と銘打たれた中で、世界最大級の国際学会です。その特徴は、取り扱う議題の幅広さにあります。太陽電池の材料、製法、構造などの技術的なことから、モジュール設計、電源ネットワークなどの応用例、政策や市場分析といった領域まで包括的に取り扱っています。

今回で42回目を迎え、スペイン、ビルバオのBilbao Exhibition Centreで開催されました。期間中に61か国から約1,600人が参加し、1,000回を超える発表が行われました。

研究分野と産業分野の接点を意識した学会で、「Science-to-industry」をキーワードに、世界中の研究者、企業、政府関係者が意見交換を行いました。議題の中で、いかに太陽光発電を実用シーンに組み込んでいくか、という「Photovoltaic Systems」に分類される発表が多かったことも、この学会の特徴を表していると感じました。

次回は、オランダ、ロッテルダムで開催される予定です。

 

2. 研究テーマと討論内容


ポスター発表の様子

私は、「Fabrication of inverted multi-cationic perovskite solar cells by electrostatic spraying」という題目でポスター発表を行いました。

次世代型太陽電池と称される、ペロブスカイト型太陽電池の製法に関する研究です。現在のペロブスカイト太陽電池は、変換効率25%を超える高効率な発電が可能です。しかし、それらの電池は、「スピンコート法」と呼ばれる製法で作製されています。溶液を基板に滴下し、遠心力で膜を作る、という方式で、高品質な成膜が可能な一方で、大面積、凹凸面への製膜ができない、材料利用率が低い、といった弱点があります。また、窒素などの不活性で満たされた、湿度0.01%以下の環境で作製されるため、専用の設備、環境の維持が必要不可欠です。

本研究では、その弱点を克服するため、「静電スプレー」という装置でペロブスカイト太陽電池を作製することを目的としています。ペロブスカイト層の製膜を室温30℃、湿度13%程度の大気下の静電スプレー塗布で行い、変換効率約6%を得ることができました。現段階では、まだまだ効率は低いですが、パラメータの最適化や、材料の選定などで、更なる上昇が見込めると考えています。

以上の内容についてポスター発表を行い、多くの研究者の方から助言をいただきました。中でも、「凹凸面への成膜」という今後の発展方向に期待したい、実際に見てみたい、といった意見が印象に残っています。どの課題を克服すればよりインパクトのある研究になるか、という具体的な示唆を得ることができました。性能向上のために手を付けていけばよい部分などの意見もいただきました。短期的、長期的な目標を整理し、研究の方向性を絞り込めたのが、今回の最大の収穫であると感じています。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

国際学会への参加どころか、海外渡航も未経験だった私にとって、少し不安がありました。しかし、一度会場に入れば、世界各国から集まった研究者と交流することができ、非常に多くの学びと刺激を得ることができました。静電スプレーとペロブスカイト太陽電池を組み合わせた論文は数が少なく、手探りで進めていくことが多い状況です。この段階で、自分の研究を知ってもらい、世界中の専門家から直接意見交換ができた貴重な経験となりました。


ビルバオの街並みとグッゲンハイム美術館

また、「太陽光発電」という一つのテーマに絞った学会でありながら、その研究領域の広さ、将来性、そして会議全体の規模の大きさには圧倒されました。現地に足を運ぶことで、講演やポスター発表だけでなく、企業展示や国際的な研究動向に触れられたことも大きな成果です。海外の測定機器メーカーの方から、測定方法に関するアドバイスをいただくこともできました。

一方で、英語力の不足により、深い議論の機会を逃してしまったことは強い反省点です。伝えたいことをうまく表す英語の表現が浮かばず、考えているうちに次の話題に移行してしまう、という状況が何度もありました。今後は語学力を高め、より積極的な国際的議論に挑みたいと考えています。

学会の合間には、アートの街である、スペイン・ビルバオの街並みやバスク地方の食文化にも触れ、国際学会ならではの交流の楽しさを実感しました。今回得た知識と経験を、今後の研究活動に全力で生かしていきます。

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