
2025 Materials Research Society (MRS) Fall Meeting & Exhibitは材料科学に関する国際学会であり、毎年同じ時期・開催地で行われている。MRSは1973年に設立され、90ヶ国以上から多様な専門分野の材料研究者が結集しており、世界的な材料科学分野の発展に貢献している。近年話題となっているAIや通信技術への更なる発展に向けた研究の他にも、太陽電池材料やバイオテクノロジー等幅広い分野を扱っている。
発表は口頭とポスター形式で行われた。口頭発表では招待講演も行われ、各材料やデバイスの特徴や歴史、理論計算に関する知見などが得られた。ポスター発表では様々な立場の研究者が意見交換をした。ポスター発表中は軽食が提供され、議論をより一層活発にしていた。
本学会において私は「Crystal growth of SnS thin films by sulfurization process」という題目でポスター発表を行った。これまで半導体分野ではSiが盛んに研究されており、製造技術や微細化技術の発展に伴い高性能化や低コスト化が実現されてきたが、近年更なる高性能化や新たな付加価値に向け新材料の研究開発が求められている。

今回私が研究対象とした硫化スズ (SnS)は、地球豊富元素から構成される環境調和型半導体として、次世代薄膜太陽電池や二次元材料への応用が期待されている。しかし、SnS薄膜の最適な成膜法はまだ確立されていない。今回はSnS薄膜の成膜法として硫化処理と呼ばれる手法を扱った。硫化処理は、簡便かつ大面積に結晶成長を促すプロセスである。本研究では特にSnS薄膜の配向性に着目しており、硫化処理条件を変化させることによる配向性の制御や、配向性ごとの電気特性について評価を行った。本成果は、硫化処理による結晶成長メカニズムの解明やデバイス化への第一歩となるだろう。
本学会を通して、研究対象である硫化スズ (SnS)に関する最新の研究動向について知ることができただけでなく、SnSと同じ層状構造を有する他の二次元材料について多くの発表を聴講した。自身のポスター発表では、様々な分野の専門家と討論をし、これからの研究に有益なアドバイスが得られた。
発表以外のところでは、英語でのコミュニケーションが刺激的であった。特に他人のポスター発表に質問する際には、慣れない英語でかつ専門用語が多くあったが、十分に理解するまで聞くことができた。英語のみの環境において相手と積極的にコミュニケーションを取ったことは、今後の人生においてととてもいい経験であった。今後も自身の研究成果や活動を世界に発信していけるよう努力していきたい。
最後に、本学会への参加にあたりご支援をいただきました、一般財団法人丸文財団に心より感謝申し上げます。
