国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和7年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
高木 香
(新潟大学)
会議名
36th International Photovoltaic Science and Engineering Conference (PVSEC-36)
期日
2025年11月9日~14日
開催地
タイ、バンコク

1. 国際会議の概要


チュラロンコーン大学講堂

PVSEC (International Photovoltaic Science and Engineering Conference) は、アジアで最も歴史が長く最大規模の太陽電池・太陽光発電分野の国際会議であり、欧州のEU-PVSEC、米国のIEEE PVSC と並ぶ世界三大PV会議の一つとして位置づけられている。結晶Si太陽電池 (PERC、TOPCon、SHJ) やペロブスカイト・タンデム太陽電池などの次世代デバイス、材料・界面物性、成膜プロセス、モジュール信頼性、システム応用まで、幅広い最新研究が発表される点が特徴である。アジアを中心に、大学・研究機関・国立研究所・主要太陽電池メーカーから多くの研究者・技術者が参加し、学術的議論だけでなく産業動向を直接把握できる貴重な交流の場となっている。

今回のPVSEC-36は2025年にタイ・バンコクで開催され、特に高効率Si太陽電池やタンデム型デバイスに関する議論が活発であった。次回PVSEC-37は韓国・大田(Daejeon)で開催される予定である。

2. 研究テーマと討論内容


口頭発表の様子

今回私は、PVSEC-36において「Analysis of nc-Si/SiOx composite films for application to high-performance Si solar cells」という題目で口頭発表を行った。

本研究は、結晶Si太陽電池に適用可能な高性能なコンタクト構造の実現を目的として、SiOx膜中に形成されるナノ結晶シリコン(nc-Si)を利用した複合膜の構造と電気特性の関係を体系的に調査したものである。Si/O組成比を制御することでパッシベーション特性とキャリア輸送性の両立が期待されることから、成膜時のガス流量比を変化させ、得られた複合膜についてTEM、AESおよび電気測定により評価した。発表では、これらの実験結果に加え、厚膜SiOx構造がSHJやTOPCon型デバイスへ応用可能であることを議論した。参加者から得られた意見はいずれも的確で、厚膜SiOx構造を太陽電池へ応用する際の課題と展望を再認識する非常に有益な機会となった。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)


学会ツアーで訪れたワット・アルン

今回のPVSEC-36への参加は、私にとって初めての海外での研究発表であり、英語での口頭発表と質疑応答を経験する貴重な機会となった。質疑では、適切な英語表現が瞬時に出ず十分に回答できなかった点は悔しさとして残った。この経験から、国際的に研究を発信するための課題が明確になり、語学力と説明力の向上に向けた強い動機づけとなった。また、学会が企画した現地ツアーに参加し、異なる国・分野の参加者と交流しながらバンコクの文化に触れることができた。バンケットでも同席した研究者と研究内容やキャリアについて意見交換を行い、国際的な研究ネットワークの広がりを実感した。今回の参加を通じて、研究面・コミュニケーション面の双方で多くの学びを得ることができ、今後の研究活動に大きく活かされる経験となった。

最後に、本渡航は丸文財団国際交流助成金の支援により実現したものであり、この貴重な機会を与えていただいた財団の皆様に心より感謝申し上げます。

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