本会議(ISDEIV)は、真空中における放電と電気絶縁に関する基礎・応用研究などが発表される国際シンポジウムである。1964年にアメリカで第1回が開催されてから隔年で開催されており、今回で31回目となった。次回は2027年にドイツで開催予定となっている。
本国際会議には17か国から288名の出席者があり、主として中国および欧州から真空放電や絶縁技術に関する口頭54件、ポスター152件の発表があった。
近年、地球温暖化係数の高いSF6ガスを使用しているガス遮断器に代わる電力用機器の絶縁・消弧媒体として真空遮断器が注目されていることから、真空インタラプタに関連する研究が多数発表されていた。
また11名の専門家が登壇し、真空遮断器・真空インタラプタに関する現在の状況と今後の動向に加え、真空絶縁の将来に関するパネルディスカッションを行った。
今回の国際会議では、酸化アニール温度が酸化クロム膜の表面抵抗値と二次電子放出係数に与える影響についてポスターで発表した。
真空容器内で電極を支持・絶縁するために固体絶縁体が使用されているが、絶縁体表面の正帯電や二次電子なだれによって引き起こされる絶縁破壊が問題となっている。本研究は、アルミナ基板表面に金属クロムを成膜し、酸化アニール処理によって酸化クロム膜とすることで、表面抵抗値と二次電子放出係数が制御できることを示した。アニール温度を上げることで表面抵抗値の増加を確認し、一定の絶縁性能を維持しつつ表面の正帯電を除去できるコーティング膜の作製に成功した。二次電子放出係数については、結晶粒サイズが大きくなるほど下地のアルミナ基板と同程度まで増加してしまう事が明らかとなった。また金属クロムの含有量も二次電子放出係数に影響を与えている事が示唆されたため、適切なアニール温度があることを明らかにした。
真空絶縁に関するテーマを扱っている国際会議のため、自身の研究に直接関係する発表が多かった。絶縁体表面を修飾して放電耐圧を向上させる手法にも様々あり、私がこれまで考えてきた内容についても議論することができたのは非常に有意義だった。ポスター発表の討論の中で、二次電子放出係数の測定法に関する質問が多かった。また二次電子放出係数が抑制されるメカニズムに関する議論もあったことから、今後更に検討する必要があると感じた。
最後に、本国際会議への参加にあたり、貴財団より多大なるご支援を賜り、心より感謝申し上げます。