Ka Conference (Ka and Broadband Space Communication and Navigation Conference)とは、NASA、ESA等の宇宙科学の研究機関、大学などが主催する、衛星通信界では権威性の高い国際会議です。30回目となる今回の会議は、イタリアのトリノに所在するLingotto Congress Centreにて開催されました。


私はKa Conferenceにおいて “Task Offloading Optimization for Low-Latency Edge Computing via Lunar-Orbit Satellites” という題目で口頭発表を行いました。

近年、世界各国で月面都市構築などの月面上の活動が計画されています。その活動基盤構築のため、探査機や月の近傍を周回する人工衛星を用いた大規模な探査が計画されています。
上記の探査では、探査物の画像認識や自律的な探査計画の推定などで機械学習の利用が想定されています。月探査では比較的リアルタイムな推論・機械学習が要求されるため、探査機や衛星等のエッジデバイス(データの発生源に近いデバイス)で学習を行うことが有効です。
しかし、エッジデバイスでの機械学習では、収集するデータの偏りにより機械学習の精度が飽和する問題が存在します。そこで本研究では、連合学習と呼ばれるエッジデバイスが持つ学習モデル(デバイスが推論を行うためのデータ群)を地球側のサーバで統合しながら機械学習を進めるアプローチを想定します。
加えて、本研究では学習モデルがどれだけ新しいデータを用いて訓練されたかの指標である「情報鮮度」に着目しました。また、エッジデバイスが適切な学習頻度を設定しない場合に情報鮮度が劣化する課題を示し、その課題を解決するための学習頻度の制御手法の提案、シミュレーションによる手法の有効性の確認を行いました。

今回の会議にて初めて英語での口頭発表を行いましたが、質問を十分に聞き取ることができずスムーズに議論が進まないことなどがあり、英語での対話力が不足していると痛感しました。
また、自身の研究を世界的に有名な研究機関等の方々に聴講してもらい意見をいただけたこと、学会途中のランチやバンケットにて著名な研究者の方々と対話させていただいたことは非常に貴重な機会だと感じました。加えて、自身の発表以外も衛星通信関連の最先端の研究が充実しており、今後の研究のための知見を深めることができました。この機会を活かし、今後の研究生活を充実させていきたい所存です。
最後に、本会議への参加にあたり、金銭面にてご支援いただいた丸文財団様に心より感謝申し上げます。
