国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和7年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
村上 響
(東北大学 大学院工学研究科 応用化学専攻)
会議名
環太平洋国際化学会議 2025
The International Chemical Congress of Pacific Basin Societies 2025 (Pacifichem 2025)
期日
2025年12月15日~20日
開催地
ハワイ・ホノルル(アメリカ)

1. 国際会議の概要

Pacifichem (The International Chemical Congress of Pacific Basin Societies) は、日本化学会、米国化学会、カナダ化学会など、太平洋沿岸諸国の化学会が合同で主催する、化学分野における世界最大級の国際会議である。5年に一度開催され、無機・有機・物理化学・材料化学・エネルギー化学など、化学に関わる幅広い分野を網羅した多数のシンポジウムが並行して行われる。

Pacifichem 2025では、世界各国から第一線の研究者・若手研究者・大学院生が多数参加し、最新の研究成果について活発な議論が行われた。本会議は、専門分野の深化のみならず、分野横断的な視点での研究交流や、将来的な国際共同研究の創出において極めて重要な役割を果たしている。

特に、今回参加したシンポジウムである「Alkali Metal and Alkaline Earth Chemistry - Developments, Applications & Challenges」では、研究においてアルカリ金属およびアルカリ土類金属を取り扱う研究者が集い、一価および二価のカチオン化学に関する新たな知見を異分野の専門家間で共有された。

2. 研究テーマと討論内容

本国際会議では、シンポジウム「Alkali Metal and Alkaline Earth Chemistry - Developments, Applications & Challenges」において、「Controlling cation mixing at the heterointerface of ABH4 thin films: impact of alkali metal ion radius on structure」と題した口頭発表を行った。

本研究は、アルカリ金属水素化ホウ素(ABH4)薄膜のヘテロ界面におけるカチオンミキシング挙動を、構成元素のイオン半径差という単一かつ普遍的な指標に基づいて制御できることを実験的に示したものである。CW-IR法により作製したNa+~Cs+までを含むABH4 2層薄膜をモデルとして、X線回折および複数の分光法による測定を行った。X線回折の結果、積層膜中のアルカリカチオン半径比がある閾値を上回ると積層膜が自発的に混合することが明らかになり、分光測定からも結晶の均一な混晶化が裏付けられた。また、原子間力走査型顕微鏡による表面構造の観察から、自発的な混晶化が表面平坦性に大きく寄与することが明らかになり、将来の水素材料デバイスにおけるABH4混晶薄膜の応用可能性を示した。加えて、過去に報告されている岩塩型イオン結晶の積層薄膜におけるヘテロ界面に関する文献との比較も交えながら、今回得られた結果の妥当性や既往の文献との差異を生じるメカニズムについて統合的に議論した。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

本国際会議への参加を通じて、自身の研究成果を国際的な場で発信するとともに、同分野の第一線で活躍する研究者と直接議論する貴重な機会を得た。

発表後の質疑では、
•イオン半径差とエピタキシャル歪みの関係
•ヘテロ界面でのカチオン混合が最表面の成長挙動に与える影響
•三層以上のABH4多層積層膜における自発的混晶化

などについて多くの質問やコメントを受け、研究の普遍性と将来展開に対する高い関心が示された。特に海外研究者からは、同様の設計概念を他のイオン結晶材料へ適用する可能性について、有益な助言を得ることができた。

今回発表したテーマは、岩塩型イオン性結晶薄膜における自発的カチオン混合に関するものであったが、質疑応答では無機材料分野の研究者に限らず、アルカリ金属を含む有機材料を扱う異分野の研究者とも活発な意見交換を行うことができた。普段無機材料や薄膜を専門としない研究者ならではの視点からの指摘も多く、今後の研究方針に影響を与える示唆を得ることができた。

これにより、自身の研究を客観的に見直す視点を獲得するとともに、将来的な国際共同研究へとつながる人的ネットワークを構築する第一歩となった。また、英語による口頭発表および質疑応答を通じて、研究内容を簡潔かつ論理的に伝える能力の重要性を強く実感した。

今回の助成による支援がなければ実現が困難であった本国際会議への参加は、研究者としての視野を大きく広げると同時に、今後の研究活動への強い動機付けとなった。改めて、心より御礼申し上げます。

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