1974年に始まった赤外・ミリ波・テラヘルツ波に関する国際会議、IRMMW-THz (International Conference on Infrared, Millimeter, and Terahertz Waves) は、今回の2025年に節目の50周年を迎え、フィンランド・エスポーにあるアールト大学で開催されました。
この会議は、物理・化学・生物学に加え、宇宙科学や核融合など多岐にわたる分野において、これまでの研究史に大きな影響を与えてきた重要な学術イベントです。今回の会議では、50を超えるトピックが取り上げられ、活発な発表と議論が行われました。中でもテラヘルツイメージング、分光に関するセッションの参加者が多く、近年の関心の高まりを感じました。また、今回は50周年という特別な会議ということもあり、これまでの会議の歩みを振り返り、将来の展望を語るヒストリカルセッションも行われました。
なお、次回は米国ユタ州ソルトレイクシティで開催される予定です。
私は「Identification of structured chirality of moiré-metasurfaces utilizing circularly polarized THz imaging」というタイトルでポスター発表を行いました。
本研究では、他の周波数領域と比べ、テラヘルツ領域では報告例が少ない円偏光二色性分光の研究成果を紹介しました。回転モアレ型メタ表面という面内に二つのキラリティー構造を持つサンプルと、スケールモアレ型メタ表面というキラリティー構造を有さないサンプルを用いて、テラヘルツ円偏光を照射した際の応答を比較しました。THzイメージングの結果においては、回転モアレ型メタ表面のみが明確なキラリティー応答を示すことが確認されました。また、3~6THzの周波数帯における円偏光二色性分光の測定結果も、イメージング結果を裏付ける応答が見られました。
この発表に対し、分光応答が顕著に現れた周波数帯の妥当性や、円偏光の生成方法に関する質問をいただきました。これらの質問は、私自身の研究をより深く見つめ直すきっかけとなり、今後の実験設計や理論的考察において非常に有意義な示唆を得ることができました。
今後もこの知見を活かし、テラヘルツ領域における新たなキラリティー検出技術の確立に向けて研究を進めてまいります。
私が行ったポスターセッションでは、多くの方に発表内容をご理解いただけた一方で、十分に伝えきれない部分もありました。その点については反省するとともに、今後の英語力やコミュニケーション力の向上の糧にしていきたいと感じました。
また、今回の会議では各セッションに加えて、バンケットやエクスカーションといった交流の機会も設けられており、研究面だけでなく人的なつながりを深める場としても大変有意義でした。これらの場では、同じ立場の大学院生や博士課程の学生との交流はもちろん、著名な研究者の方々と直接お話しする貴重な機会にも恵まれました。
さらに、エクスカーションでは、トナカイへの餌やり体験を通して現地の文化に触れることができ、研究活動にとどまらない異文化交流の楽しさを実感しました。
本会議への参加に際し、貴財団より温かいご支援をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。