International Union of Materials Research Societies - International Conference on Electronic Materials (IUMRS-ICEM)は、1988年に始まり、最初の会議は日本で開催された。この会議は国際材料学会連合(IUMRS)の最も重要な連続会議の一つであり、隔年で開催されている。今回参加した、IUMRS-ICEM 2024はIUMRS、香港材料研究学会(HKMRS)、香港城市大学(CityU)の国家貴金属材料工学研究センター(NPMM)香港支部の共催により開催された。本国際学会は化合物半導体、先端スピントロニクスと磁性材料、ストレッチャブルとウェアラブルエレクトロニクス、光学材料とデバイス、太陽エネルギー変換のための材料とデバイス、エネルギーハーベスティングと貯蔵、合成プロセスと特性評価法などを含む幅広いトピックが対象である。
フォトンアップコンバージョン(UC)は低エネルギー光を高エネルギー光に変換できるプロセスであり、太陽エネルギー利用、バイオイメージング、光触媒などをはじめとする幅広い分野への応用が期待されている。三重項三重項消滅に基づくフォトンアップコンバージョン(TTA-UC)は他のUC機構と比べて、低い励起光強度で高効率なUCを実現でき、励起波長、発光波長の調整も容易であることから注目を集めてきた。しかしながら、これまでのTTA-UCに関する研究は、溶液中での実施例がほとんどでありTTA-UCの応用に必須である固体中での研究は依然として少ない。
本国際会議では、濃度消光を抑制したガラス状紫外エミッター、多重共鳴型熱活性化遅延蛍光材料(MR-TADF)純有機センシタイザーを組み合わせ、高効率かつ純有機の二元系固体可視紫外TTA-UCを実現したことを報告している。エミッターとセンシタイザーを混合し、加熱、室温で急冷することで高い透明性を有する純有機ガラス状UC膜を簡便に作製した。この膜を用いて固体TTA-UCを評価した結果、最大で2.6%の高いUC効率を示した。これはエネルギーマイグレーション型の固体可視紫外TTA-UCとして極めて高い値である。
自身のポスター発表時において、エミッター、センシタイザーの分子設計、膜厚、膜の作製方法についての議論を行った。拙い英語でも自分が持っている語彙やジェスチャーによって内容を概ね伝えることはできた。しかし、円滑なコミュニケーションには更なる英語力の向上が必須であると痛感した。
また、光学材料関連の発表だけでなく、半導体材料など様々な分野の第一線で活躍する研究者の講演を多数聴講し、その分野の現状や今後の発展について理解することができた。こういった経験は自分にとって異分野の研究内容を理解し、自身の知見を広げるまたとない機会であった。本国際会議で得た経験を今後の研究活動に生かしていきたい。
最後に、本会議への参加にあたってご援助を賜りました貴財団に厚く御礼申し上げます。