International Commission on Glass (ICG) Annual Meetingは、ガラスが関係する様々な分野について議論・情報交換するために毎年開催される、ガラス分野最大の国際学会です。今年は、韓国仁川にある国際会議場 Songdo ConvensiAにて、2024年8月25日から2024年8月28日の4日間の日程で開催されました。19か国から350人の参加者があり、5件のPlenaryレクチャー、20のセッションで79件の招待講演、141件の口頭発表および74件のポスター発表があったとのことです。セッション内容としては、ガラスに関する考古学から産業におけるガラスエンジニアリング、さらにはガラスの光学的、熱的、機械的特性までと、非常に幅広い内容をカバーしており、それぞれのセッションで終日活発なディスカッションがなされていました。
次回のICG Annual Meeting 2025は来年1月にインドのコルカタで開催予定です。
本会議では、No.11, Luminescence Properties and Photonic Applications of Glassesというセッションにおいて、「Circularly Polarized Luminescence of Chiral Ceramic LaBSiO5:Eu」というタイトルで発表を行いました。
円偏光発光(Circularly Polarized Luminescence, CPL)とは、キラルな構造を持った物質が発光する際に、放射される左右円偏光の強度比に違いが生じる現象です。左右のキラリティに対応して、CPLシグナルは正負それぞれの値を示します。これまでCPL特性の研究のほとんどは、有機化合物や金属錯体などのようにキラルな分子構造を持った化合物や、キラルフォトニック結晶を対象として行われてきました。無機結晶の場合、有機化合物のように分子というユニットを定義することはできません。しかしながら、「対称操作としてらせん軸を持つ」など、キラルな結晶構造というものが存在可能です。これまでキラル無機結晶のCPL特性を評価した研究は数例しかなく、またCPLシグナルの符号を含めたCPLスペクトル形状と結晶構造のキラリティとの相関関係を明らかにしたものもありませんでした。今回LaBSiO5というキラル無機結晶でCPLが発現すること、そして結晶構造のキラリティとCPLスペクトルの形状との関係を無機結晶では初めて対応付けたという内容を報告しました。
本会議に参加することで、ガラスやセラミックスに関する最新の情報、特に発光材料や光にかかわるガラスやセラミックスの最新の動向を収集することができました。また、CPLに興味をもつ研究者とつながりを持つこともできました。質疑応答やその他の交流において、私のつたない英語によりコミュニケーションがスムーズにいかない場面が多々あり、語学力の向上が必要であることを痛感しました。これらの経験をもとに、今後の研究をより強力に進めていきたいと思っております。
最後になりましたが、今回多大なご支援を賜りました貴財団に厚くお礼申し上げます。