国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和5年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
大西 健斗
(慶應義塾大学 大学院理工学研究科 総合デザイン工学専攻)
会議名
22nd European Conference on Thermophysical Properties (ECTP 2023)
期日
2023年9月10日~13日
開催地
Venice, Italy

1. 国際会議の概要

この度、令和5年度丸文財団国際交流助成による支援を受け、2023年9月10日から9月13日の間、22nd European Conference on Thermophysical Propertiesに参加し、自身の研究についての口頭発表を行った。本学会は1968年に始まり3年に1度ヨーロッパで開催されており、22回目の開催となる今回はイタリアのヴェネツィア本島にある美術系建築大学IUAVで行われた。


ヴェネツィアの夜景

会場の大学外観

本学会は多様な物質の熱物性を研究対象としており、物性の解明・測定技術の開発・工学応用の提案などの幅広い観点で、学術研究者と産業研究者が集い、それぞれの研究が共有される。今回の参加者は313名であり、5つの会場で行われる口頭発表とポスター発表を通じて、参加者同士でのグローバルで活発な議論がなされた。

2. 研究テーマと討論内容

私の研究題目は“Development of a clinical diagnostic device for non-contact in-situ measurement of tear viscosity”であり、レーザを用いた粘性率の非接触測定手法の開発について、デバイス設計・作製から測定検証まで行った結果を発表した。粘性率測定は物質の特性を評価する指標として工学的に利用されてきたが、疾患との相関関係に注目した医療診断への応用も期待される。

現状、ヒトの涙液分泌能力や涙液の質の評価はサンプリングや侵襲性を伴うものであり、測定時間の長さや再現性・定量性の低さが課題となっている。そこで我々の提案する非接触で高速な測定により、リアルタイムで定量的な非サンプリング測定を可能にし、より正確で簡易的な診断と病理解明への応用を実現したい。そこで私は研究成果として、臨床応用を想定した基礎診断向けのデバイス作製と、生体の形状や機構を模したモデルの作製、作製したデバイス・モデルを使用した測定結果を示した。具体的には、瞬き機構を搭載した眼部モデルによりヒトの涙液膜を再現し、臨床応用可能なデバイスによる測定結果により、提案手法が診断手法として妥当であることを発表した。リアルタイムに変化し個体差がある生体上で、状態に応じて測定条件を最適化する制御手法を開発し再現性を高めることが今後の課題となる。

本学会において医療応用という分野は比較的珍しいこともあり、質疑応答では生体へのレーザ照射の安全性や再現性低下要因など、生体ならではの要素に注目した討論が行われた。安全性に関しては生体上照射に適したレーザ波長・強度の検討内容を示し、再現性低下に関しては画像認識を用いた測定タイミング制御の展望を示した。


発表中の様子

発表会場

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

自身の口頭発表を通じて得られた成果は、世界に研究成果を発信できただけでなく、世界の研究者からの反応をフィードバックとして得られたことが大きかった。討論において注目された議題を重要課題として再認識し、今後の研究で解決していくモチベーションとなった。


ガラディナーの様子 with所属研究室同行者3名

また本学会に一緒に参加した研究室の同期とともに、共通の学会での発表の成功を目標に同じ宿で毎日練習をし、本番でお互いの勇姿を見守り合ったことは非常に貴重な経験であり、学びも遊びも通じてお互いの絆をより深めることができた。

最後に、学会でのセッション時間外においても多くの学びと成長があった。日常生活での外国人とのコミュニケーションに加え、学会のガラディナーでは外国人と同じテーブルを囲んで食事をし、異文化交流を通じて英語への積極性を得ることができたと感じる。渡航当初は英語でのコミュニケーションに抵抗があったが、参加後は英語を積極的に話す意欲が芽生えた。

今回の学会参加において貴財団から多大なる支援を賜り、非常に貴重で学びのある体験をさせていただきましたこと、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

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