国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和5年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
平澤 祐樹
(徳島大学 大学院創成科学研究科 理工学専攻)
会議名
Optics & Photonics Taiwan International Conference 2023 (OPTIC 2023)
期日
2023年12月1日~3日
開催地
國立成功大學, 台湾台南市

1. 国際会議の概要


学会会場(國立成功大學 電気工学科棟)

Optics & Photonics Taiwan International Conference 2023 (OPTIC 2023)は、世界中から優秀な人材を集めて、光学材料、光学技術、メタバースフォトニクスの最新の進歩を共有することを目的としている国際学会であり、台湾で開催される同種の国際学会としては最大規模です。

発表対象のテーマは、ナノフォトニクス材料とデバイス、光導波路と通信、量子エレクトロニクスとレーザー技術、光情報処理とホログラフィー、光学設計・試験・工学 、バイオフォトニクスとバイオメディカルイメージング、ディスプレイと固体照明、薄膜と光起電力技術、光センシング、メタバースフォトニクスの10個です。

今年は台湾の台南市で2023年12月1~3日の計3日間開催され、プレナリー講演5件、招待講演38件、口頭発表353件、ポスター発表527件が行われ、参加者は1,498人でした。また学会には、世界各国の研究者が参加し、活発な議論が交わされていました。

2. 研究テーマと討論内容

【研究テーマ】
Compensation Performance for Atmospheric Turbulence-Induced Phase Fluctuation on Multiplexed OAM Beams

スマートフォンの普及や動画配信サービスの充実、コロナ禍におけるリモートワークの需要により通信データ量の増加は著しく、今後も光通信ネットワークの更なる大容量化が求められています。本研究では、光に軌道角運動量(OAM)を持たせた「光渦」を用いた新たな多重化技術による大容量化を目指しています。光渦は螺旋状の等位相面を持つ特徴的なビーム構造をしており、絡み合う螺旋の数(モード次数と呼ぶ)が異なれば互いに直交しています。そのため異なるモード次数を持つ光渦に別々のデータを変調して送信し、受信側で分離しそれぞれ復調できます。この結果、波長や偏波に加えた新たな多重化が可能となり、通信容量を飛躍的に増加させることができる特長があります。
一方で光渦の伝送には課題があります。特に屋外の大気中を伝搬する際に、大気の温度分布、気圧分布、風等の乱流に起因する位相変動を受けて螺旋位相構造が保てなくなり、受信した際に正常にデータ復調できなくなる場合があります。この大気擾乱の影響を適応的に補償するため、擾乱を検知する参照光を用いて光渦の螺旋位相構造の乱れを補償し、受信信号品質が向上することを計算機シミュレーションで実証してきました。具体的には、30個のモード次数を持つ多重化させた光渦に対して、大気擾乱の影響を最も良く補償する単一モードの参照光を発見するためにシミュレーションを行い、弱い擾乱時と中程度の擾乱時の2つの条件での最も効率良く補償する参照光のモード次数とビーム径のパラメータを確認しました。

【討論内容】
報告者は口頭発表を12月2日に現地で行いました。時間配分は発表12分、質疑応答3分であり、報告者の発表には2人の聴講者から有益なコメントと質問をいただきました。質問とその回答は次のとおりです。
1つ目の質問は、補償された多重化OAMデータビームのモードでどうして正と負で補償の違いがあるのかというものでした。今回のシミュレーョン検証では、正と負のモード次数+15から-15までの合計30個を多重化させた光渦に対し大気擾乱を付与しましたが、最も補償性能が高かった参照光の単一モード次数が負の次数であったため、光渦の正と負で補償性能に違いが生じたと回答しました。
2つ目は、弱い擾乱時と中程度の擾乱時は互いに関係あるのかという質問でした。今回のシミュレーション検証では修正カルマンモデルと呼ばれる大気擾乱モデルを用いており、擾乱の強さは大気屈折率構造パラメータの大きさに依存します。そのため、同じモデルを使用したという観点で関係があると回答しました。


報告者の口頭発表の様子

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

今回の国際学会は現地にて口頭発表で参加しましたが、他の研究者と英語で質疑応答をすることができ、非常に有意義な時間を過ごせました。しかし、質問をすぐに聞き取れないことや、聞き取れても相手が理解できるように英語で上手く表現できなかったことがあり、今後の研究や学会に参加するにあたって英語力向上の必要性を感じました。また他の研究者の発表を聴講しても理解できなかったことが多く、光学についてもっと学ばなければいけないと思いました。

台湾・台南での滞在では、移動や食事、買い物等の日常生活も基本的に英語で会話する必要があったのですが、台湾の方々もジェスチャーや聞き取りやすいように話してくれたため、困ることはほとんどありませんでした。しかし、もっとスムーズに英語で会話できるようになりたいと思いました。

また台湾は日本に近くアジア圏であり、文化が似ているところや異なるところを肌で感じました。例えば、レストランや衣料品・雑貨店などでは日本のチェーン店が多く、親切な人が多かったところは似ていると思いました。異なるところは現地の方々の日常の移動手段として原付やバイクが多いことに驚きました。これら以外にも、台南の気候風土、夜市での食事の味や匂いなど、現地に滞在しないと分からなかったこともあり、本学会の参加に当たって非常に有意義な時間を過ごせたと思っています。

最後に、このような貴重な経験をするにあたり、多大なるご支援をいただきました貴財団に心より感謝申し上げます。

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