国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和4年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
中村 凪 (早稲田大学 大学院基幹理工学研究科 機械科学・航空宇宙専攻)
会議名
The 36th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems (IEEE MEMS 2023)
期日
2023年1月15日~19日
開催地
Science Congress Center Munich, Munich, Germany

1. 国際会議の概要


ミュンヘンの街並み

The 36th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems (IEEE MEMS 2023)は1987年に始まり今年で36回目を迎えるMEMS分野最大の国際会議です。

Micro Electro Mechanical Systems (=MEMS) は直訳すると微細な機械と電子要素を持つシステムとなりますが、広義にはマイクロシステムに関連する技術全般の内容を含む非常にバラエティ豊かな分野です。本会議では今年もマイクロ・ナノデバイスの加工技術やパッケージング、光学デバイス、流体システム、バイオ・医療デバイス、物理・化学センサ、RFデバイス、電磁デバイス、アクチュエータなど300件以上(口頭70件、ポスター253件)がありました。例年600~800人ほどが参加し、本年度も同等の人数の研究者が一堂に会しました。

本年度は、第34回がオンライン、第35回がハイブリット形式となって以降、初めてのフル対面形式での開催となりました。開催場所はミュンヘン工科大学にあるScience Congress Center Munichで、来年度は1月21~25日にアメリカ テキサスでの開催が予定されています。

2. 研究テーマと討論内容

本会議では “Folding Method of Kirigami structure with folding lines” というタイトルで発表を行いました。

本研究は曲げることだけではなく伸縮することのできる電子デバイスに関する研究です。
折り紙・切り紙は世界的にOrigami・Kirigamiとして認知されており、その学術的な有用性から、年々研究数は右肩上がりで増えています。特に電子デバイスの分野ではウェアラブルや曲面貼付などをはじめとしてフレキシブル性の獲得が望まれる中、折り紙・切り紙は “伸びない材料” を用いて伸縮デバイスを実現する手法として注目されています。折り紙は蛇腹折り、切り紙は七夕の飾りを例に挙げると、折り線・切り線を加えることで伸びない紙が構造全体として伸縮する様子が想像できると思います。一般的に元々伸びることのできる材料で伸縮電子デバイスを制作した場合、電気的性能やコストなどが伸縮性とトレードオフを生じてしまいますが、折り紙・切り紙は性能と伸縮性を分離できる点が特に優れています。しかしながら、折り紙は折り線が増えると正確に折り上げることが困難になり、切り紙には面全体が反るため電子素子実装が困難であるという問題を有しています。


口頭発表の様子

そこで本研究では折り紙と切り紙を組み合わせることでそれぞれの弱点を補い合い、デバイス大規模化と電子素子実装に適応した “折り線を有する切り紙構造(切り折り紙構造)” を提案しました。切り折り紙構造は全体に引っ張りを加えることで各所の折り線を折り上げるため、通常の折り紙とは折り上げの難しさが異なり、端部に固定部との変形差を緩衝する構造を挿入し、引っ張りを2軸で制御するという手法により理想的な折り上げが可能となることを示し、提案した折り上げ手法を用いて切り折り紙構造を用いた伸縮電子デバイスの実証を行いました。

討論内容としては切り折り紙型電子デバイスの利用シチュエーションや耐久性の設計についてのご質問をいただき、議論を行いました。また、発表後に他の研究者と実際のデバイスを見せて応用性についての議論をさせていただく機会に恵まれるなど、今後の研究を進めていく糧となる知見を得ることができました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)


学会主催の夕食会の様子

現地での開催であったため、ポスター・口頭発表会場でのディスカッションも今までの学会よりも積極的に行うことができたと考えています。特にポスター発表では英語で伝えきれない部分は身振り手振りも含め密に議論を交わすことができた点について、多くのことを学ぶことができました。また、各セッションの合間も廊下に多くのテーブルが設置されていたためフリーディスカッションを交わすチャンスが多く存在し、研究内容以外の内容についても多くのコミュニケーションをとりました。

コロナ禍もあり、研究を始めてから大勢の人の前で直に発表するという機会がなかったため、口頭発表はかなり緊張しましたが、今回の経験により一皮剥けることができたと感じています。来年度も同様に発表する機会を得られるように頑張りたいと強く思います。

最後に、この度の学会参加にあたり多大なご支援をいただきました一般財団法人丸文財団に厚く御礼申し上げます。

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