国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和4年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
栗田 喜章 (大阪大学 大学院工学研究科 機械工学専攻)
会議名
SPIE Photonics West 2023
≪LASE≫ Laser Applications in Microelectronic and Optoelectronic Manufacturing (LAMOM) XXVIII
期日
2023年1月28日~2月2日
開催地
The Moscone Center, San Francisco, California, USA

1. 国際会議の概要

SPIE. Photonics West 2023はSPIEが主催するレーザ・光学関連では、世界屈指の国際会議であり、レーザ・生物医学光学・バイオフォトニクス技術・量子・オプトエレクトロニクスなどを取り扱っている。本会議は、毎年、1月末から2月初旬にかけてカリフォルニア州サンフランシスコのモスコーニセンターで開催されている。Photonics West 2023は「バイオメディカルに関する会議 (BiOS)」「レーザ技術に関する会議 (LASE)」「オプトエレクトロニクスに関する会議 (OPTO)」の3つのシンポジウムに分かれており、パラレルセッションで会議が進行した。会議の他に、「Photonics West Exhibition」「BiOS Expo」の2つの展示会が併設され、レーザ、バイオフォトニクス、オプトエレクトロニクスに関する様々な展示がなされた。オーラル講演数はBiOSが1,498件、LASEが529件、OPTOが1,264件であった。著者は1月31日に開催されたLaser Applications in Microelectronic and Optoelectronic Manufacturing (LAMOM) XXVIIIに出席し、ポスター発表を行った。

次回 Photonics West 2024は2024年1月27日~2月1日に開催予定である。


Photonics West 2023開催場所
(モスコーニセンターサウスの正面写真)

プレナリーセッションの様子

2. 研究テーマと討論内容

著者は「Observation of welding behavior for elucidation of spatter suppression mechanism in laser welding using a 16 kW disk laser」と題してポスター発表を行った。


ポスター発表の様子

レーザ溶接ではスパッタと呼ばれる溶融金属の飛散現象が起きる。スパッタは溶接部の減肉や空孔の発生など溶接欠陥の原因となり、高品質なレーザ溶接のためスパッタ抑制機構の解明が求められている。そこで本研究では溶接中の溶融挙動を、透過X線を用いてリアルタイムで観察することで雰囲気圧力が溶融挙動に及ぼす影響を調査した。その結果、湯流れの速度が減圧下では大気圧下に比べ0.54倍遅く、これがスパッタ発生に影響を及ぼしていることがわかった。

レーザ溶接に関する諸現象を実験的に明らかにできているので、数値解析でスパッタ発生に寄与する物理を考えてみてはどうかとアドバイスを受けた。また、他の材料でも同様のことが起こるのかと質問を受け、以前に行ったニッケル合金のレーザ溶接結果でも同様の結果を得ており、雰囲気圧力がレーザ溶接の挙動を安定化させる因子であると回答した。その他、レーザ溶接におけるスパッタ抑制機構について議論を深めた。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

私は海外で開催された国際会議に初めて出席した。自身の成果発表を行った後、私の研究分野である、レーザ熱加工の分野を中心に会議を聴講した。中でも自動車部品向けのアルミニウム合金の溶接ではキーホールの不安定性による空孔の発生が問題となっている。そこで、X線を用いてキーホールおよび溶融池の挙動を観察し空孔発生の機構を解明しようという内容であった。さらに、マグネシウムの含有率の異なる二つのアルミニウム合金を使用し、マグネシウムの含有率による影響を調査しており、非常に興味深かった。私もX線を用いてキーホールや溶融池の観察を行っているが、含有金属の量や種類によって溶融挙動が変化するのかという視点では観察できていない。今回の聴講では、そのような研究における新たな視点を得ることができた。展示会において、現地企業の方々から最新製品情報を入手し、自身の研究への応用について議論した。その他、レーザ光源およびビームプロファイル制御技術などの最新の動向を知り得る事ができた。

ポスター発表においては、リスニングでは、聞こえてくる単語から大まかな意味は分かるものの、詳細を理解するために何度も聞き返したり、自分から確認したりしてしまった。スピーキングでも咄嗟に単語が出ず、身振り手振りでごまかす場面が多かった。海外の研究者の方々は、私の拙い英語でも熱心に発表を聞いてくださり、議論をすることができたが、更なる議論の深化には英語力の向上が必要と感じた。今回の反省を生かし英語力の向上に努めたい。本会議に出席した経験は自身の研究における多様な視点と英語力の重要性を認識する貴重な体験となった。

最後に、この度の国際会議の出席にあたり、貴財団よりご援助を賜りましたこと、心より御礼申し上げます。

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