国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和4年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
林 幹二
(国立大学法人豊橋技術科学大学 応用化学・生命工学専攻)
会議名
Applied Superconductivity Conference 2022 (ASC 2022)
期日
2022年10月23日~28日
開催地
Hawaii Convention Center, Hawaii, USA

1. 国際会議の概要

Applied Superconductivity Conference(ASC)は、超伝導に関連する材料物性、デバイス開発、応用技術など多岐にわたる分野の研究発表が行われるIEEE主催の国際学会で、2年毎に開催され、世界20カ国以上の国から研究者が参加している。今回のASC2022は、10/23から10/28の6日間にわたってアメリカ合衆国ハワイ州ホノルルのHawaii Convention centerで開催された。前回のASC2020は、COVID-19の拡大に伴いオンライン開催に変更されたため、4年ぶりの現地開催となった。発表数は合計1,689件で、分野の内訳は、センサやロジックなどを含むElectronicsが475件、超伝導線材やコイルなどを含むパワー応用のLarge scaleが880件、Materialが334件と報告された。パワー応用でもArtificial pining centerに関する発表が注目されているように感じた。一方で、Electronicsでは、SFQ、特にNeural network(もしくはNeuromorphic)に関する発表が注目されているようであった。中でも、高温超伝導デバイス開発分野では、2015年ごろから注目され始めた希ガスイオンビーム照射による高温超伝導デバイス作製に関する発表が多く、実応用を見据える段階に近づいているように感じた。一方で、自身が発表した高温超伝導センサデバイス開発とその応用に関する発表件数は少なく、ブレイクスルーに向けた一層の努力が必要であると痛感した。

2. 研究テーマと討論内容

研究テーマ
SQUID (Superconducting QUantum Interference Device) は、現有する最も高い磁場感度を有する磁気センサの一つである。高温超伝導体(High Temperature Superconductor: HTS)を使用したHTS-SQUIDは液体窒素温度(77 K)程度で動作可能で、ランニングコストや設備規模を低減できる。しかし、HTS薄膜は磁束を材料内に取り込む性質(第二種超伝導体)を持っており、ノイズ増加の原因となっていた。特に、広く使用されているバイクリスタル型SQUIDは、人工双晶粒界(バイクリスタル)が磁束の侵入する原因となり、低周波数帯域でのノイズ増加の原因となっていた。そこで、本研究では、超伝導薄膜中の磁束を捕捉する機能をもつ微細な非超伝導の穴(アンチドット)に着目し、HTS-SQUID磁気センサの磁束ノイズ低減法を検討した。膜厚200 nmのYBa2Cu3O7-δ (YBCO) 薄膜をレーザー成膜し、バイクリスタル型HTS-SQUIDに加工した。続いて、SQUIDのバイクリスタル近傍のYBCO薄膜にガリウム集束イオンビーム(FIB)を照射し、直径約300 nmのアンチドットを1 µm間隔で7×7個の格子状に導入した。作製したSQUIDは、ゼロ磁場および66 µTの静磁場中で液体窒素冷却し、SQUIDに接続したロックインアンプの電圧出力をスペクトルアナライザに入力し、ノイズスペクトルを評価した。アンチドット導入前でゼロ磁場中のSQUIDは、50 Hzまで1/fノイズが支配的で、ホワイトノイズレベルは100 Hzで15 µΦ0/√Hzとなった。また、66 µTの磁場中ではスペクトル全体のノイズレベルが上昇し、100 Hzで90 µΦ0/√Hzに上昇した。一方で、アンチドットを導入したSQUIDは、磁場中におけるノイズ増加が抑制され、100 Hzで40 µΦ0/√Hzに低減された。これらの結果は、磁場印可によって結晶粒界へ侵入した磁束がアンチドットに固定され、磁束ノイズが抑制されていることを示唆した。


ポスター発表の様子

討論内容
ポスターセッションの2時間の間、ほぼ切れ目なく見学者が訪れ、説明の要望や質問を多数受けた。特に、実際に高温超伝導SQUIDセンサを使用している研究者は高い関心を持っており、複数の研究所のメンバーと詳しい内容や課題についての議論を交わした。一方で、近年の希ガスイオンビーム照射による高温超伝導薄膜加工の発端であるShane A. Cybart氏も訪れ、本研究で使用しているガリウムイオンビームを使用して加工したデバイスの長期安定性に関する問題点について指摘し、改めて今後の課題であると感じた。また、デバイス開発ではなく、人工ピンニングサイトであるアンチドットを応用していることから、超伝導線材を開発している研究者も多く訪れた。線材の研究者の知見から見た解釈は、アンチドットの物理的な特性に踏み込んだものであり、参考になった。今後は、今回の学会参加で得られた知見を活かし、現在の高温超伝導バイクリスタルSQUIDのアンチドットによる磁束ノイズ低減をより詳細に検証していく。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

今回のASC参加では、実験の進捗や渡航準備に不安があったものの、発表ではそれなりの反響が得られたと感じた。また、これらの議論を通じて、自身の研究の業界における立ち位置や課題について再認識するとともに、異なる観点からの知見を得ることができた。特に、HTS-SQUIDを実際に利用している研究者から反響が得られたことについては、研究のモチベーション向上につながった。興味を持って立ち寄る聴講者は、上手とはいえない発音や言葉に詰まってしまう場面に対しても真剣に理解しようとしてくれたため、英語力の向上への意欲が向上するとともに、大いに勇気づけられた。前回のASCをはじめとしたオンライン開催の国際学会では、発表中の音質や進行の影響で意思疎通が極めて難しかったが、実地に赴いたことで、発表にも聴講にも利点が多かった。今後、状況が改善することを切に願う。

また、海外で1週間以上生活することで、日本とは異なる習慣や文化に触れることができ、良い経験となった。宿泊はコンドミニアムと呼ばれるバス・キッチン付きのWeekly Mansionのようなホテルで、食事などは自身で調達した。その過程で、現地の公共交通機関や店舗を利用したり、現地の住人とコミュニケーションをしたりすることができた。観光地であることもあってか、外国人にフレンドリーな人が多く、非常に過ごしやすかった。これらの経験を記憶に留め、今後の研究人生に生かしていきたい。

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