国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和元年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
周 安博
(大阪大学 大学院基礎工学研究科)
会議名
EuroMOF 2019
期日
2019年10月27日~30日
開催地
Paris, France

1. 国際会議の概要

EuroMOF 2019は有機金属構造 (Metal Organic Frameworks; MOF) に焦点を当てた権威ある国際学会である。2年に1度開催される国際学会であり、2015年にポツダム、2017年にデルフトで開催された際は有機金属構造・共有結合性有機構造体・多孔質ポリマー分野の約450人の研究者が集った。MOFは、無機材料、有機材料、錯体材料のすべての要素を持つ材料であるため、多分野の応用が可能であり、それぞれの分野の専門知識を持つ研究者が集う学会ある。MOFの応用例として主に電気化学触媒、吸着剤、分離膜、発光材料としての機能も持つため、それぞれの機能に精通するトップ研究者が集う学会でもある。

また、EuroMOF 2019では、有機金属錯体の研究の最先端である欧米各国からトップレベルの研究者が集まるため、有機金属錯体に関する研究集会の中では最もインパクトのある国際会議の一つとして挙げられ、ここで行われる発表が毎年、有機金属錯体の研究に大きな影響を与えている。

2. 研究テーマと討論内容

私は、“ Fabrication of single atomic Co on N-doped graphene via sequential treatments as an excellent electrocatalysts for oxygen reduction reaction”という題目で、MOFとグラフェンを用いた新規金属含有炭素材料について発表を行った。近年、MOFを窒素やアルゴンといった不活性ガスで焼成することによって得られる金属担持カーボン材料が様々や用途で高い性能を示しており、大きな注目を浴びている。しかしながら、MOFにおいて、金属対有機配位子の割合が高いため、焼成段階において金属同士が凝集してしまい、触媒性能が低下してしまうという問題点がある。そこで、本研究では、多種多様な単一原子の遷移金属をドープしたカーボンの合成が成功した。新規な単一遷移金属原子が合成されると、今まで未開拓であった単一原子遷移金属の機能の開拓につながる。

イオン交換を用いたMOF材料の合成法が画期的であるということで、他の研究者から高い評価を受けた。中でも、電気化学系の研究者からは、金属の含有量が非常に低いのにも関わらず、高い触媒性能を示したことについて興味を持たれた。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

この国際交流において、合成した種々の単一遷移金属原子ドープカーボンが電極触媒としての応用の知見を広げることができたため、非常に有意義であった。また、今回発表したように、イオン交換という操作を用いたMOF担持材料の合成は、新規合成方法であるため、多くの研究者から質問を受けた。その中でも、自分と異なる分野の研究者からの質問は、自分の研究をより深く考察することに役に立てるものばかりであった。

今回の国際会議では、自分が普段あまり触れることのない光化学分野や量子力学的な分野からのMOFについての研究も学ぶことができたため、今後の自身の研究を大きく躍進させることができる、実りある時間だった。

さらに、海外の研究者に発表することや質問に答えることの難しさを身にしみて感じることができ、自身の英語能力をさらに向上していくことに努めていきたい。

このように、今回このような支援をしていただいて、EuroMOF 2019に出席できたことで、今後の自身の研究をどう促進させるかを考える端緒をつかむ事ができたことを、この場をお借りして、ご支援いただいた丸文財団の皆様方に深くお礼申し上げます。

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