国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和元年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
瀬田 雄基
(三重大学 大学院工学研究科 物理工学専攻)
会議名
13th International Conference on Nitride Semiconductor 2019 (ICNS-13)
期日
2019年7月7日~13日
開催地
アメリカ・ベルヴュー

1. 国際会議の概要

本国際会議 (13th International Conference on Nitride Semiconductor 2019) は、窒化物半導体に関する新規物性の探索、新規デバイス概要の構築および作製に関する研究を討論する世界最大規模の国際会議である。開催地として欧州、北米、アジアの順でローテンションが組まれる本国際会議は2年に1度の頻度で開催され、2021年(第14回目)は日本(福岡)で開催される予定である。今回、アメリカはもちろんのこと、ドイツ、ポーランドおよびフランス等のヨーロッパ諸国、日本、韓国および中国等のアジア諸国から計1,000名以上の研究者および技術者が集まった。本国際会議では 、エピタキシャル成長およびバルク成長といった結晶成長技術、電子デバイス、光および電子特性、ナノ構造・ナノデバイス作製に関する研究報告および議論が活発に行われており、発表件数は800件以上あり、そのうち口頭発表400件近くあった 。窒化物半導体は青色LED、青色半導体レーザーなどのデバイスからノーベル賞につながった材料であり、今後は次世代パワーエレクトロニクスデバイスの構成材料としても注目を集めており、会議における重要なセッションの一つになっている。また、申請者が近年取り組んでいる、窒化物半導体のエピタキシャル成長機構に関する研究、特に窒化物半導体のナノ構造形成機構の解明および制御に関しても、本国際会議において活発な議論がされており、派遣者の研究成果を広くアピールできるとともに、海外研究機関での最新の研究成果が収集できる場でもある。

2. 研究テーマと討論内容

口頭発表中の写真

派遣者は「Equilibrium morphologies of faceted GaN under metalorganic vapor phase epitaxy condition: Wulff construction using absolute surface energies」という研究テーマで討論を行った。近年、次世代エレクトロニクスデバイスとして高出力・高効率な青色窒化物半導体デバイスの実現が待望されている。それを実現させる手法の一つとして窒化物半導体ナノワイヤ・ナノロッドといったナノ構造を用いた新規のデバイス構造が注目されている。それらのナノ構造は温度、圧力およびキャリアガスといった成長条件に依存して様々なファセット面が出現することが実験的に報告されているが、そのモルフォロジーの物理的なメカニズムは実験的に明らかになっていない。派遣者はこのメカニズムに注目し、窒化物半導体(GaN)のナノ構造における形状予測を行い、成長条件を考慮したモルフォロジーの理解を理論的に解明し、口頭発表を行った。発表後の質疑応答では、同じく理論研究に携わっている研究者から強い関心を寄せていただき、「形状予測を行った構造の面積はどのように決めているのか」という質問を受け、得られた結果は定量的に評価することができるのか討論した。本研 究で得られた結果は定性的には実験結果と一致したが、定量的に評価するのは難しいという結論に至ったため、成長の動力学がナノ構造の形状を決定するうえで重要になり得ることが見出された。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

ウェルカムレセプションで出された料理の写真

窒化物半導体における最新の結晶成長技術およびナノデバイス作製に関する研究について、世界中の研究者と議論することができ、非常に有意義な経験となった。一つの分野で多くの研究者とコミュニケーションを取ることができるため、会場では自ら積極的に声をかけ、国内学会では決して経験することができない国際的な交流を経験することができた。国内のみならず視野を広げ、世界中の研究者と討論をすると、様々な研究に対する考え方や課題があるのだと感じ、現状に満足せず世界で活躍できる研究者になりたいと強く感じた。さらに、2日間にわたって開催されたポスター発表では、様々な分野の研究者に質問をすることにより、普段行っている理論研究では考慮していなかったことや、実験 の研究者にとって理論的に何が知りたいのか等が分かり、今後派遣者が理論的にナノ構造の形状予測を行っていくうえで、実験との対応付けを丁寧に行っていくことが必要不可欠と認識できた。また、研究者とよりよい議論を行う国際的なコミュニケーション能力を向上させることが必要であると痛感し、今後は国際的なコミュニケーション能力の向上に精進する必要があると強く感じた。以上のように海外の研究者との国際的な交流は非常に有意義なものとなり、貴重な経験となった。本会議に参加するにあたって、貴財団から多大なるご支援をいただいたことに、心より感謝いたします。

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