国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和元年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
大貫 良輔
(東京理科大学 大学院理工学研究科 物理学専攻)
会議名
2019 MRS Fall Meeting & Exhibit
期日
2019年12月1日~6日
開催地
Hynes Convention Center, Boston, Massachusetts, United States of America

1. 国際会議の概要

図1 会場入口

Materials Research Society(MRS)は、約80ヵ国から約16,000人のメンバーが参加する世界最大の材料研究者コミュニティです。材料に影響を与える科学のさまざまな分野でのコミュニケーションと技術情報の交換を促進します。MRS Fall Meeting & Exhibitは、学会が主催する2つの主要な国際年次会議の1つです。本国際会議は毎年春と秋にアメリカ合衆国内で開催されており、国の研究機関や大学の研究所の幅広い分野の研究者が6,000人以上参加しています。また、国内外の企業がスポンサーとして200以上参加しており、大型の実験装置から論文誌の紹介に至るまで展示会場で広報活動を行っています。

今回のMRS Fall Meeting & Exhibitは、マサチューセッツ州ボストンのHynes Convention Centerで2019年12月1日から6日に開催されました。ソフトマテリアル、バイオマテリアル、機能性材料、ナノ材料、フォトニック材料などの合計55のシンポジウムに分かれ、それぞれのシンポジウムで口頭発表およびポスター発表が5日間にわたり開催され、盛んな議論が繰り広げられていました。

2. 研究テーマと討論内容

図2 ポスター展示の様子

本発表では“ Ring-like iridescence causes the macroscopic uniform color: coloration of the Photonic Ball ”という演題でポスター発表を行いました。以下に研究概要を示します。

近年、フォトニックボールと呼ばれる球状のフォトニック結晶が注目を集めています。これは、コロイド粒子の周期的な配列である一次構造と、球形の二次構造で構成されています。興味深い光学特性が、350 nmを超えるコロイド粒子を持つフォトニックボールについて報告されています。光学顕微鏡を使用して観察すると、フォトニックボールの周辺領域でリング状の虹色の反射が確認できます。一方、顕微鏡で観察される虹色にもかかわらず、肉眼で観察される場合、フォトニックボールは巨視的に特定の色を持っています。この周辺領域の反射メカニズムは、これまで物議を醸してきました。

本研究では、新しい反射モデルを提案することにより、フォトニックボールの上記の複雑な光学特性を説明することに成功しました。また、反射の角度依存性を調査し、フォトニックボールが巨視的な色の角度依存性が非常に低いことを発見しました。この低角度依存性から、フォトニックボールは新たな構造色顔料としての候補となり得ることを示しました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

図3 Hynes Convention Center前

本会議を通して、多岐にわたる分野の研究発表を聞くことおよび自ら研究を発表できたことは非常に有意義な経験となりました。私の研究内容のメインが光学解析になっていたため、あまり関心を持たれないのではないかという不安はありました。しかしながら、討論時間が始まると多くの研究者から質問をいただき、名刺交換までさせていただいた人もいました。

また、英語におけるコミュニケーション能力不足などの新たな課題も見つかりました。私は本会議が国際会議において3回目の発表でした。今回は初めてのポスター形式での英語発表となり、口頭発表とは違った難しさを感じました。今後の国際会議においては、この英語能力不足を補うことでより質の高い討論ができるようにすることが必要であると感じました。

末筆ながら、これらの貴重な体験をするにあたり、多大なるご支援をいただきました丸文財団様に心から感謝申し上げます。

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