国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和元年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
前田 拓也
(京都大学)
会議名
The 65th International Electron Device Meeting (IEDM2019)
期日
2019年12月7日~11日
開催地
San Francisco, United States of America

1. 国際会議の概要

IEDM (International Electron Device Meeting) は、毎年12月に米国サンフランシスコのHilton Union Square Hotelで開催される半導体電子デバイス分野で最高峰の国際会議である。採択率は3割程度(2019年は28%)と極めて低く、世界各国の研究機関から非常にレベルの高い最先端の成果が報告される。発表件数は200件程度であるのに対し、参加者は1,000人を超える。今年は39のセッションがあり、先端CMOS、新規メモリ、センサ、MEMS、パワーデバイスなどの分野について活発な発表・議論が行われた。

サンフランシスコは、米国の西海岸に位置し、写真の Golden Gate Bridge が有名である。シリコンバレーに近く、IT系企業が多数存在し、近代的なビルが建ち並んでいる。一方で、急な地価の高騰による大量のホームレスの発生も深刻な問題であり、詳細な描写は憚られるが治安が悪く綺麗とはいえない。

食文化としては、新鮮な海産物を食べることができ、クラムチャウダーや蟹料理が有名なようである。また、街にいくつかの日本料理屋・寿司屋が存在しており、会議中にカリフォルニアロールを食べる機会が何度かあった。

次回のIEDMも、同じく2020年12月に米国サンフランシスコで開催予定である。

Golden Gate Bridge

名物 パンをくり抜いた中に入ったクラムチャウダー

2. 研究テーマと討論内容

本会議では、“Impact Ionization Coefficients in GaN Measured by Above- and Sub-Eg Illuminations for p/n+ junction” という題で口頭発表を行った。

窒化ガリウム(GaN)半導体は、次世代パワーデバイス材料として注目を集めており、現在研究開発が活発化している。しかし、詳細な物性については未解明なものも多く、学術的な基礎研究が必要とされている。特に、絶縁破壊特性を決定する最重要物性「衝突イオン化係数」に関しては、その測定の難しさにより精度の良い値が皆無であり、正確なデバイスシミュレーションを行うのが困難で、絶縁破壊特性の理論限界も明確化されていない。

発表の様子

本研究では、p-n接合界面がn型基板近傍に存在し、空乏層がp層側に広がる「p/n+接合」ダイオードに対して、バンドギャップより短波長/長波長の光を照射することで、p層表面での光吸収による電子注入/p-n接合界面でのFK効果に起因した光吸収による正孔注入による光電流が測定できると考えた。それぞれの光電流から増倍係数を求めて解析することで、GaNの電子・正孔の衝突イオン化係数を求めることに成功した。得られた値を用いて増倍係数をシミュレーションしたところ、実験値を良く再現した結果が得られた。これは、本研究で得られた衝突イオン化係数の精度が良いことを示している。得られた値より、絶縁破壊特性の理論限界を明確化することができた。これらの結果は、GaNにおけるアバランシェ増倍現象を考える際に重要なデータであり、GaNデバイスの絶縁破壊特性のデバイスシミュレーションに有用である。

発表では、多数の質問をいただき、研究の詳細や今後の展望などについて有意義な議論を行うことができた。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

San Franciscoの街並み

本会議は、分野内で最もレベルの高い国際会議であり、各国の研究機関の最先端の研究内容を聴講することができた。また、自分の発表に対しても多数の質問をいただき、発表後にも多数の研究者と議論を行うことができた。また、GaNだけでなく、SiやSiC、Ga2O3など他材料の研究者とも意見交換・議論を行うことができた。また、専門分野から少し離れた先端CMOSやメモリなどの分野のトップレベルの研究についても勉強することができ、非常に良い経験となった。

私は、来春に学位取得予定であり、これが学生最後の国際会議となったが、「GaNの衝突イオン化係数の決定」という研究初期から定めていた最終目標といえる成果をIEDMで発表することができ、また、そこで非常に良い反響を得ることができて、研究者冥利につきる思いである。このような経験ができたことは、今後の一生涯の糧であり、来年から米国Cornell Universityにてポスドクとして研究者を続けるが、この経験を活かして新天地でもより一層頑張りたいと思う。

最後に、指導いただいた先生方、共同研究者の方々、今回ご支援いただいた一般財団法人丸文財団にこの場を借りて心より感謝申し上げます。

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