国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成30年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
矢津田 昭仁
(大分大学 大学院)
会議名
The 11th International Conference on Future Computer and Communication (ICFCC2019)
期日
2019年2月27日~3月1日
開催地
ミャンマー,ヤンゴン

1. 国際会議の概要

2月27日~3月1日にミャンマー共和国のヤンゴンにて開催された、ICFCC2019に参加して成果発表を行った。ICFCCは、本年で11回目を迎える情報および通信技術に関する国際会議であり、昨年はシンガポールで開催された。本年は、85編の論文が採択され、2件の基調講演、6件の招待講演とともに、5つの並列セッション(分科会)で発表が行われた。

会議の日程は、初日の午前中に併設開催されたもう1つの国際会議と合同の開会式の後、基調講演2件、招待講演3件が行われ、午後から5つの分科会セッションに分かれて論文発表が行われた。2日目も同様のスケジュールで、午前中前半に招待講演3件の後、午前中後半および午後に分科会セッションが行われた。最終日は、エクスカーションとして、西ヤンゴン工科大学(WSTU)およびヤンゴン・コンピュータ大学(UCSY)に分かれて大学訪問を行った。

報告者は、2日目午後の「Intelligent Robot Design and Control」分科会セッションで成果発表を行った。各講演者には20分の持ち時間が与えられ、15分の研究発表と5分の質疑応答を実施した。多くの聴講者から有益な質問やコメントを受けることができ、修士課程の研究内容を総括する上で、極めて貴重な機会となった。

写真は、基調講演の様子である。

2. 研究テーマと討論内容

私の研究テーマは、ロボットとセンサネットワークを用いた高齢者の見守り手法の提案と実装である。具体的には、屋内環境を監視しながら高齢者が熱中症に罹患することを予防するシステムを開発した。このシステムは、センサによって屋内環境の気温や湿度を計測し、その結果、屋内での熱中症罹患の危険性があると判断したときに、人型ロボットの身振り動作で高齢者に注意喚起を行う。日頃は癒しを与えるためにキュートな動きを行うロボットが、奇妙な動きで高齢者の注意を喚起することで、危険性を確実に伝えることができるようにした。

「癒し」と「奇妙」という対照的な動きを行うロボットのモーションデザインには、相応の技能が必要になる。そこで、技術的な知識を持たない利用者でも、直観的に実用的なロボットのモーションデータが制作できる手法を考案・実装した。これは、単眼カメラで人間のジェスチャをセンシングし、その動きを2次元の関節情報として取得した後、同じ動作をロボットで生成するための関節制御コマンド群に変換し、実ロボットの動作を駆動するというものである。今回の発表では、実際に人間の関節点情報からロボットのサーボモータを動作させることで、人の動きを真似るロボットが作成できるというデモ動画を提示しながら説明を行った。

発表後の質疑において、「今後の展望として、機械学習を用いて動作生成を行うことは考えているか」という質問が出た。これに対して、現状は人間が実際に動作を行い、そのデータを用いてロボット動作を作成しているが、今後は機械学習を用いることで、人の動作データ群から自動的にロボット動作を生成する方法への拡張を想定しており、データ蓄積と機械学習用のサーバ機能の開発と動作データの収集に取り組んでいることを伝えた。

写真は、筆者の発表する様子である。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

これまで、複数の東南アジアの国々を訪問した経験があるが、ミャンマー訪問は今回が初めてであった。技術やインフラもまだまだ発展途上のようで、会議中に停電があったり、人力の案内などに触れたりする機会があった。

印象的だったのは、最終日のエクスカーションで訪問した西ヤンゴン工科大学の学生や教職員との交流であった。何人かと話をしてみると、流暢な英語で就職活動の様子や日本での博士後期課程の修学のことなどを教えてくれた。私はまず、その向上心と行動力に感化された。また、今後こういった情熱を持つ人々と研究活動や仕事を共にすることで、お互い切磋琢磨できるようにスキルを磨かなければならないと強く感じた。

また、本会議の地元からの参加者の約8割は女性であったことに驚いた。そのためか、研究発表でも、インスタグラムを用いたデータ収集の研究や、ツイッターを用いた同様の研究が多く見られた。さらに、ミャンマーの人たちは写真撮影(自撮り)を好むそうで、会場内でも多くの参加者が写真撮影を行っていた。

研究をしている学生も、分野を問わず女性の数が多いと聞いた。発展途上のため、男性は労働力として働き、女性は研究を行っているのかもしれない。このような点は、日本では体験できないことであった。また、日頃私たちがどれだけ恵まれた生活を送ることができているかを改めて感じることができた。

今回の国際会議参加により、大変貴重な経験をすることができました。これも、丸文財団様のご支援があってこそ実現できたものです。厚く御礼申し上げます。

写真は、最終日の西ヤンゴン工科大学訪問において、筆者の指導教員が筆者の研究を紹介している様子である。

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