国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成30年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
女部田 勇介
(早稲田大学 先進理工学研究科 応用化学専攻)
会議名
AiMES 2018 Meeting (米国電気化学会第234回講演大会)
期日
2018年9月30日~10月4日
開催地
Mexico, Cancun, Moon Palace Resort

1. 国際会議の概要

会場となったMoon Palace Resort

米国電気化学会は米国の電気化学に関する学会、Electrochemical Society (ECS)が主催する国際的な学会で、電気化学に関連する最新の研究について討論することを目的として、年2回(春季と秋季)開催されています。234回目の開催となる今大会は、La Sociedad Mexicana de Electroquímica (SMEQ)との共同大会として、メキシコ・カンクンにて9月30日から10月4日の5日間にかけて開催されました。Electrochemical Societyは電池、化学・バイオセンサー、エネルギーテクノロジー、表面処理をはじめとする13の電気化学分野に関する大きな学会であり、今回の大会では世界中から研究者・技術者による2,100件を超える発表、450件に上るポスター発表が行われました。近年のエネルギー分野における産業界の需要の高まりから、Liイオン電池他、次世代二次電池関連の会場への参加者の集中が目立ちましたが、そのほかの会場でも各分野の最先端をゆく研究者による発表や討論が行われており、特に理論計算を用いた研究発表も広く見受けられました。

次回は235th ECS Meetingとしてアメリカ、テキサス州ダラスにて2019年5月26日から31日にかけて開催される予定です。

2. 研究テーマと討論内容

私達のグループでは、高密度実装などにおける薄膜成膜技術として工業的に幅広く用いられている無電解析出プロセスに着目した第一原理計算解析を行っています。無電解析出プロセスに対しては実験手法によって種々の検討がなされてきていますが、分子や原子レベルでの反応機構の解析は十分でないのが現状となっています。また実際のプロセスにおいては、ホルムアルデヒドの代替となるような人体に無害かつ安価な還元剤の探索が急務となっていますが、他のプロセスで用いられる次亜リン酸のような還元剤が反応性を示さない、といった課題が存在しています。そこで私達は、無電解Cu析出プロセスにおける新たな還元剤設計に向け、計算科学によるアプローチからホルムアルデヒドと次亜リン酸の反応性の差異を明らかにすることを目的として、金属上での2種の反応機構および電子状態の違いに対する解析を行っています。

発表時の様子

本講演会では、「First-Principles Study of Catalytic Activity of Cu, Ni and Pd Surface for Formaldehyde and Hypophosphite As Reducing Agents in Electroless Deposition」という題目で、従来検討では不十分だった反応機構中における溶媒種の果たす役割と反応中間体の構造や安定性に着目した第一原理計算による解析を行い、ポスター発表を行いました。発表の際には、無電解めっきを研究室されている企業の方や、同分野の大学研究者や教授の方に興味を持っていただき、建設的な議論を行うことができ、好意的に受け止めていただきました。また、新たな研究対象、さらに深めるべき対象を検討することができ、今後の研究につなげることができるご意見をいただくことができました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

ポスター会場の前で

今回の講演会では、特に2点の成果がありました。

1点目は初めての海外での活動を無事に終えることができた、という点です。自身にとって初めての海外での国際学会であったため、環境への適応や雰囲気が全くの未知であり、不安な部分も多くありましたが、英語を用いた研究室のゼミ発表や留学生との英語でのコミュニケーションのおかげで十分なコミュニケーションができたと感じています。その一方で語学的な面よりも話の構成や伝え方の不十分な点からディスカッション時に齟齬が生まれることもあり、研究の位置づけや目的意識について改めて考えなおし、さらなる研鑽が必要であると感じました。また期間中、現地のスタッフと現地の言葉で交流することができたこともよい国際交流ができたと感じています。

2点目は自身の用いている手法やテーマに関して多角的なディスカッションができた点です。発表時には海外の著名な研究者や教授の方々と議論することができ、今後の研究に関するご意見をいただけたのみならず、自身の研究と同分野の研究者とのつながりを作ることができたのは非常に大きな成果であると考えています。特に自身の取り組む計算科学によるアプローチは近年急速に広がりつつある研究手法であり、多種多様な方法が存在する中で、発表時のディスカッションや多くの講演から、自身の進むべき方向性や新規性を見出すことができたことは大きな収穫であったと感じています。

最後に、今回の国際会議に参加するにあたり多大なるご支援を賜りました貴財団に心より感謝申し上げます。

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