Material Research Society (MRS) Fall Meetingは非常に大規模に行われる材料学会です。今年度は11月26日~12月1日の6日間にわたり、ボストンにて開催されました。
開催地であるボストンはアメリカのマサチューセッツ州東部に位置する巨大都市で、地下鉄やバス等の公共交通機関が整っており、観光地として大変有名です。また、ボストン近隣にはマサチューセッツ工科大学やハーバード大学など、非常にレベルの高い大学が存在しています。
本年度は54セッションの論文発表が行われており、どのセッションでも非常に活発な議論が交わされていました。私が着目したES04 Interfaces in Electrochemical Energy Storageのセッションでは主にリチウムイオン二次電池を扱っていました。第一原理計算を用いた電解質の電位窓の計算や、operand法という新しい分析法を用いた電池の劣化測定など目新しい報告が多くみられ、リチウムイオン二次電池はまだまだ盛んに研究されていることがわかり、今後の更なる発展が期待できると感じました。
【発表タイトル】
High rate performance in dot-BaTiO3 supported LiCoO2 epitaxial thin film
【論文内容】
リチウムイオン二次電池の正極活物質LiCoO2に強誘電体物質であるBaTiO3を担持すると、高速充放電特性が劇的に向上することが報告されている。しかし、これまでBaTiO3がどのように作用しているか解明されていなかった。そこで私たちのグループは電極/電解質界面に着目しBaTiO3の効果を調査するため、パルスレーザー堆積法を用いて様々なBaTiO3/LiCoO2エピタキシャル薄膜を作成した。エピタキシャル薄膜とは、基板の方位を引き継いで成長した薄膜で、今回は界面以外の状況を揃えるために使用してある。作製した薄膜の高速充放電特性を比較したところ、BaTiO3がドット状に堆積している場合、特性が劇的に改善することが示された。また、BaTiO3ドットによる特性向上は、BaTiO3-LiCoO2-電解液の界面が存在することにより、Liイオンの正極からの脱離反応が促進されていることが示された。
本学会に参加したことで聴衆側でも発表者側でも得られるものがありました。
まず、国際学会と国内学会との一番の違いは研究の幅広さにあると感じました。国際会議で発表されている研究は基礎から応用まで幅広い発表があり、日本にも材料学会があれば良いと思いました。
自身のポスター発表では、自身の英語力の至らなさを改めて感じ、世界で通じる英語を話せるようになると強く決意しました。
また今回初めて約13時間という長距離フライトを体験しましたが、途中で腰が痛くなり何度も立ち上がってストレッチをしなければなりませんでした。更に現地についてからも時差ボケに苦労しました。次回は機内の対策をもっと練り、長距離フライトに耐えられるようにします。
全体を通して大変勉強することの多い学会でした。
今回、一般財団法人丸文財団に国際交流助成をいただいたおかげで2017 MRS Fall meetingに参加することができました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。