国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成27年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
横関 貴史
(埼玉大学)
会議名
International Conference on Silicon Carbide and Related Materials 2015
期日
2015年10月4日~9日
開催地
Giardini Naxos, Italy

1. 国際会議の概要

ICSCRM看板前にて

International Conference on Silicon Carbide and Related Materials (ICSCRM) はシリコンカーバイド(SiC)とそれに関連する材料に基づく、電子デバイス技術の世界で最も重要な技術会議である。本会議は1987年にアメリカで始まり、それから5回アメリカで開催された後、国際運営委員会により、アメリカ、ヨーロッパ、日本で隔年開催されており、昨年の会議では500を超える参加者が出席した。

今回のICSCRM 2015はイタリアで10/4から10/9までの日程で開催され、活発かつハイレベルな議論が展開された。

2. 研究テーマと討論内容

発表時の様子

本会議では “Change in Characteristics of SiC MOSFETs by Gamma-ray Irradiation at High Temperature” という題目にてポスター発表を行った。現在、2013年に発生した東電福島第一原発での事故を受け、「超耐放射線性エレクトロニクス」の開発が急務となっている。我々はその実現に向け、炭化ケイ素(SiC)半導体を用いた金属-酸化膜-半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の耐放射線性能を数MGyレベルにまで引き上げることを目的とした研究を行っている。今回の研究では、SiC MOSFETに対し、高温アニールを施しながらガンマ線照射を行った。結果として、室温下での照射では吸収線量の増加と共に酸化膜固定電荷も増加し、劣化が進んでいたが、高温下でのガンマ線照射では約1 MGy以降、その発生は抑制され、特性劣化が確認されなかった。ガンマ線照射をしても特性が劣化しないことは極めて興味深い挙動であった。今後の課題は、MOSキャパシタなどの異なるデバイスに対しても同実験を行い、ガンマ線照射効果および高温アニールによる劣化抑制のメカニズム解明を行うことである。

講演の際には、内容に関する詳しい説明の要求や実験条件の確認に関する質問を受けたり、実験結果やその考察に関して様々な観点から多くの議論を交わすことができた。その中でも特に、リーク電流の発生原因や界面準位の発生原因に関する有意な助言がいただけたことは非常に大きな収穫であった。この活発な議論を通じてガンマ線とSiC MOSFETの関係、ガンマ線劣化メカニズム解明に関する新たな知見を得ることができ、今後の研究をより優位に進めるための糧とすることができた。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

本会議に出席した結果、普段はなかなか聞くことのできない様々な発表を聞くことで幅広い知識を習得することができた。また、中でもデバイスの作製段階でガンマ線を照射し、その特性を向上させるという報告がいくつか見受けられ、ガンマ線に関する研究をしている者として大変興味深く感じた。自身の発表を振り返ると、私のポスター内容に関して質問をいただくだけではなく、私では考察しきれなかった部分についての意見や考えをいただくことができた。また世界中の方々と意見交換をすることができたのは、極めて大きな体験であり、その中で得られた考え方や視点は今後の研究を進める上で非常に有益なものとなった。

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