国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成27年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
池田 翔
(東北大学 大学院理学研究科)
会議名
40th International Conference on Infrared, Millimeter, and Terahertz Waves
期日
2015年8月23日~28日
開催地
中国 香港

1. 国際会議の概要

香港中文大学の写真

International Conference on Infrared, Millimeter, and Terahertz waves (IRMMW-THz2015)は、ミリ波からテラヘルツ・赤外領域の電磁波に関する分野における最大の国際会議であり、参加人数は約400人で200件以上の最新の研究成果が発表される。今回のIRMMW2015は香港中文大学にて、2015年8月23日~28日の期間で開催された。アジアで開催されたにもかかわらず、アジアからの参加者は2-3割程度で世界各国からの参加者が集まり活気にあふれる国際会議となった。

2. 研究テーマと討論内容

報告者は”Carrier dynamics in graphene studied by ultra-broadband optical pump/terahertz probe spectroscopy”というタイトルで発表を行った。グラフェンは炭素原子一層で構成された2次元のシートであり、その光学特性として光励起後の光学伝導度が減少、及び、増加する報告が過去にされた。しかしながら、先行研究のいずれも、測定周波数帯域が~2THz程度であり、10THz程度と推測される非平衡状態グラフェンのキャリア散乱に対して不十分であったため、正負の光学伝導度変化の機構はこれまで明らかにされていなかった。以上の理由から報告者は、0.5~30THzの測定帯域を有する超広帯域光励起テラヘルツプローブ分光法を開発し、グラフェンの光励起後の負の光学伝導度変化の機構が、ドルーデ重みの減少、及び、キャリア散乱の増大によって引き起こされているのを観測することに成功した。また、それら変化が、1%未満であった従来報告と比べて30%と大きいことを明らかにし、今回のIRMMW2015にて口頭発表を行った。

質疑応答では、測定結果の解析の精度について、また、光励起によってドルーデ重みが減少する物理的意味等の質問を受けた。さらに解析方法にキャリア散乱のエネルギー依存性を考慮する必要があるなど、報告者にとって新たな発見や知見を得ることができ、有意義な討論となった。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

招待講演者の発表

本会議の発表で、グラフェンの光励起後のホットキャリア応答の新たな知見を示すことができた。本会議では報告者のみならず多くのグラフェンに関する研究発表がされた。グラフェンは多くの研究者らによって、理論的・実験的に研究が進められていることをIRMMW2015に参加することで実際に認識することができた。それにもかかわらず、未だ明らかでない現象が数多く存在し、また、デバイス応用についても発展途上であることを実感し、今後の自身の研究のモチベーションに繋がった。 また質疑応答において質問の意味を正確にとらえることの難しさを感じることができた。これから、自身の英語力、及び、自身の発表内容に関する理解力の両方が不足していることを実感した。最後に、本国際会議の参加に当たり多大なるご支援をいただきました丸文財団に心より感謝申し上げます。

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