国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成26年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
濱崎 嵩宏
(大阪大学 基礎工学研究科 システム創成専攻)
会議名
The 59th Annual Magnetism and Magnetic Materials (MMM) Conference
期日
2014年11月3日~7日
開催地
アメリカ合衆国・ハワイ州・ホノルル

1. 国際会議の概要

会場となったヒルトンハワイアンビレッジ

Magnetism and Magnetic Materialsは年に一度アメリカ合衆国の都市で行われる、米国物理学協会(AIP:American Institute of Physics)と電気電子学会(IEEE Magnetic Society)主催の国際学会であり、59回目に当たる今回はハワイ州ホノルルにある、ヒルトンハワイアンビレッジを会場にして開催されました。5日間にわたり、スピン流・磁壁・磁化ダイナミクス・MRAM・熱アシスト磁気記録といった磁性に関する基礎からデバイス応用まで、非常に幅広い分野の研究成果が口頭発表・ポスター発表含め延べ約1,900件報告され、活発な議論が繰り広げられました。また、今回より新たにトポロジカル絶縁体に関するセッションが口頭発表・ポスター発表のどちらともに追加され注目を浴びていました。

2. 研究テーマと討論内容

“Topological Insulators and Complex Magnetism”のセッションで“Comparison of the spin injection/extraction efficiencies between bulk-insulating and -metallic topological insulator”という題目でポスター発表を行いました。

近年、3次元トポロジカル絶縁体(3DTI)という新たな量子状態を持つ物質が発見され、物性物理の分野で注目を浴びています。最大の特徴は、物質内部(バルク)は絶縁体的であるのに対して、物質表面に金属状態が現れる点です。更にその表面状態では電子の運動方向に対してスピンの向きが一意に決定する(Spin-Momentum-Locking : SML)ため、3DTIの表面に電流を流せばスピン偏極電流を誘起することが可能です。このSMLを利用した新たな原理に基づくスピントロニクスデバイスの創成が期待されており、世界各国の研究グループでスピン偏極電流検出に向けた研究が行われています。これまでにSMLに起因したスピン偏極電流はBi2Se3(BS)を用いて観測されていますが、BSはバルク金属的な3DTIであり、表面状態の物性を評価するのは容易ではありません。

発表時の様子(黄色のシャツが濱崎)

そこで、本研究では表面状態を顕在化しやすいバルク絶縁的なBi1.5Sb0.5Te1.7Se1.3(BSTS)を使用してBSとのスピン偏極電流の検出効率を比較しました。その結果、バルク絶縁的なBSTSがより効率的にスピン偏極電流を検出できることが分かりました。これにより3DTI中のスピン偏極電流の検出には物質中のフェルミレベルに位置が重要であることが判明し、スピントロニクスデバイス材料にはバルク絶縁性の高いBSTSが好適であると結論付けました。
発表では、実験結果に加え素子作製法などを発表しました。質問では、今後の展開について問われることが多く、より検出感度を上げるための試みについていくつか紹介させていただきました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

トポロジカル絶縁体は本会議から採用されたセッションであり注目度が高く、私のポスターの前にも多くの人が立ち止まってくださいました。発表時間は約3時間ありましたが人が途切れることはなく、慣れない英語でのディスカッションということもあり、終わったころには疲労困ぱいでした。しかし、改めてトポロジカル絶縁体への期待感の高さを肌で感じることができ、今後のモチベーションとなりました。セッション中では著名な研究者の方や同分野の研究者の方も立ち寄ってくださり、直接議論を交わすことができたことは非常に貴重な経験でした。

また今回の開催地・ハワイは有名なリゾート地であり、気候は温暖で過ごしやすく海も非常にキレイで、とても安らかな気持ちにさせてくれました。

最後になりましたが、今回のMMM参加に当たり貴財団に多大なご支援いただきましたこと、心より感謝いたします。誠に有難うございました。

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