国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成25年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
小田 康平
(名古屋工業大学 大学院工学研究科 未来材料創成工学専攻)
会議名
4th Asian Conference on Coordination Chemistry (ACCC4)
期日
2013年11月4日~7日
開催地
International Convention Center, Jeju, Korea

1. 国際会議の概要

Asian Conference on Coordination Chemistry (ACCC)は2年に1度開催される学会であり、アジアを中心とした約21カ国から、錯体化学を研究する約400人の研究者らが参加する学会であります。第4回目となる本会議は大韓民国、済州島のInternational Conference Centerにて、11月4日から7日にかけて開催され、147件の講演が行われました。また、ポスターセッションは2時間設けられ、その際に合計150件以上のポスター発表が行われました。本研究発表は6日、16:15~18:00にポスター発表を行いました。

この学会では、錯体化学に関わる研究者がアジアを中心に世界各国から集まり、基礎的な研究から応用研究まで幅広く発表が行われました。また、合成化学・理論化学・物理化学・分光化学・触媒化学といった様々な分野の研究者らによって活発な議論が繰り広げられ、こうした最先端研究の議論を直接聞くことにより、我々のような若手研究者が、知識的・精神的に学ぶことは多いと感じました。次回は2年後の2015年7月12日~15日の日程で、香港にて開催されます。

2. 研究テーマと討論内容

本会議で私は、「Structures and physicochemical properties of polypyridine-Ru(II) complexes formed in a cage-type ligand」というタイトルでポスター発表を行いました。

この研究の背景として、中心金属にRu(II)イオンを用い、これにπ共役系の広い2,2':6',2''-terpyridine (tpy)等のポリピリジン配位子を導入した錯体は、太陽光を効率的に他のエネルギーへと変換する触媒として注目されていますが、その短い励起寿命のためにさらなる改良が求められています。一方で、Y型ゼオライトの様なホスト空間にRu(II)-tpy錯体をゲスト分子として取り込むことにより、励起寿命が増加することが知られており、こうした現象を分子性の化合物で実現することができれば、光触媒としての応用がより容易となると考えられます。

そこで本研究では、籠型構造を有する配位子LNHのホスト空間にゲスト分子としてRu(II)-tpy錯体を取り込むことで、ゼオライトと同様の効果を分子性の化合物で達成し、新たなエネルギー変換デバイスを構築しようと試みましたので、この内容をポスター発表の形式で報告しました。普段は直接話す機会のない海外の研究者や他分野の研究者と議論をすることで、非常に客観的な視点からの質問や助言を受けたので、この研究テーマの今後の課題や、その解決方法を模索していく上で、重要なヒントを得ることができました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

今回の国際会議出席が私にとって初めての海外渡航であったため、会議はもちろん、移動時や宿泊時の出来事なども含めて、全てが新鮮で貴重な人生経験となりました。

まず韓国の中でも済州島は観光目的で訪れる日本人も多く、若干の日本語が通じる環境でしたが、公共交通機関やタクシー等を利用する際や、宿泊施設での会話は、基本的に英語で行う必要がありました。その際に、現地の方々が私の稚拙な英語を積極的に理解し、大変親切にしてくださったので、親近感を覚えるとともに、私がこれまで持っていた海外渡航に対する漠然とした不安を、大いに払拭することができました。

会議では、ポスター発表を通して国内外の多くの研究者との交流ができました。特に今回は、海外の研究者と議論をすることで、海を越えなければ得られないものがあることを知りました。言葉の壁は確かにありましたが、国境を越えて、大変有意義な質問や助言をしっかりと得られました。それらは、当該研究の今後の課題の設定や、新たな合成法の開拓に確実に繋がります。そして、今回の経験を通じて、より高い語学力を身につけ、将来はさらに高度な学術交流をしたいという、新たな目標も生まれました。

最後になりましたが、本国際会議へ参加するにあたり、貴財団から多大なるご支援を賜りましたことを、心より感謝申し上げます。

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