国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成30年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
伊藤 海斗
(京都大学 大学院情報学研究科 数理工学専攻)
会議名
57th IEEE Conference on Decision and Control (CDC 2018)
期日
2018年12月17日~19日
開催地
Miami Beach, FL, USA

1. 国際会議の概要

IEEE Conference on Decision and Control (CDC) は、システムと制御の理論、応用についての最先端の研究が毎年発表されるトップカンファレンスであり、今年も世界各国から多くの研究者が参加した。

今回はアメリカ、フロリダ州のマイアミビーチで2018年12月17日から19日の3日間にわたり開催された。論文投稿数は1,938件にのぼり、1,155件が採択され、23ものセッションが並行して進行された。その中には、同年3月に逝去された制御界の巨人であるBruce Francis教授の追悼セッションも含まれていた。セッションの他にもプレナリー講演やワークショップ、企業による展示などが行われた。近年機械学習がますます注目を浴び、12のセッションやワークショップで取り扱われていたことは今回特徴的であった。

次回は2019年12月11日~13日にフランスのニースにて開催予定である。

マイアミの街並み

会場 (Fontainebleau)

2. 研究テーマと討論内容

「Theoretical Error Bounds for Stochastic Linearization of Feedback Systems」という題目で、非線形性を含む確率システムを線形システムで近似したときの誤差評価について発表した。確率システムとはシステムに含まれる不確かな影響を確率的に表現するためのモデルである。例えば風力発電量は天候に強く依存し、不確かな振る舞いを見せる。その風力を電力系統に大量に導入すると不確かさによって、周波数変動が引き起こされる。よって不確かさの影響を見積もることは重要であり、そこで確率システムによるモデリングが有効となる。一方モデリングの際には、実際に風力を連係させた電力システムの性質から、突発的な外れ値を表現できるような非ガウス性、入力飽和のような非線形性を考慮したモデリングを行う必要がある。

セッションの様子

そこで本発表では、非ガウス性を考慮するためにウィーナ過程を拡張した安定過程を用いたモデリングを行った。また、非線形システムをそのまま解析することは困難であり、モンテカルロ法による近似評価が多く用いられる。しかしこれには莫大な計算量が必要となる場合があるなどの欠点があるため、我々は適切に非線形性の線形化を行った上で評価出力の統計量の解析を行うというアプローチをとった。さらに本研究の主結果として、線形化による近似評価が真の統計量のどれくらい良い近似となっているかを与える理論保証を導出し、実際に電力システムのモデルに適用することで本手法の有効性を検証した。本結果により、高速かつ高精度に不確かさの評価を行うことが可能となる。この手法は風力発電以外のさまざまな対象にも適用可能である。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

国際会議で発表することが初めての経験であり、英語での発表、質疑応答はもちろん初体験であった。結果的には、なんとか内容を伝えることができ、聴手に興味を持ってもらい、質問をいただくことができた。一方で質問を十分に理解することができずに満足のいく回答ができなかったことで自身の英語力不足を痛感した。海外の研究者としっかりコミュニケーションをとってより良い研究ができるよう、今後は英語力の向上にも目を向けたい。

自身の研究発表以外にも、世界的に著名な研究者の講演や、世界最大規模の会議だからこその幅広いテーマの研究発表を聴講することができ、知見や興味を広げることができた。この貴重な経験は、今後の研究生活に十分に活かしていきたい。

最後に、本会議に参加するためのご支援をいただいた一般財団法人丸文財団に心より感謝いたします。

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