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国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・
参加者名
石瀧 真之
(九州大学)
会議名 The 28th International Conference on Low Temperature Physics (LT28)
期日 2017年8月9日〜16日
開催地 スウェーデン・ヨーテボリ
1.国際会議の概要
≪Congress Hall の様子≫

The International Conference on Low Temperature Physicsは、IUPAPの後援の下、3年ごとに開催される低温物理学に関する国際会議である。1946年に初めて開催された本会議は、今年で28回目、71年という長い歴史を持つ国際会議である。この会議は量子気体や超伝導、極低温技術など基礎から応用の分野まで幅広い内容を扱い、低温物理学分野において多大な影響力を持つ。今年のLT28は超伝導研究が盛んに行われているヨーテボリで開催され、発表は、口頭発表とポスター発表合わせて1,000件以上行われた。会場では、企業ブースも展開されており、低温技術に関する企業が出展していた。次回のLTは2020年8月16日から22日の日程で札幌にて開催される予定である。

2.研究テーマと討論内容
≪ポスター発表の様子≫

ある温度以下になると電気抵抗が0になる超伝導体の内部にはクーパー対という電子対が含まれている。このクーパー対が超伝導の性質を担っているが、クーパー対にはシングレット状態とトリプレット状態の2つの状態がある。トリプレット状態のクーパー対は、通常超伝導体と相性の悪い強磁性体中でエネルギー損失なしに長距離伝播できることから、省エネなスピントロニクスデバイスへの応用が期待されており、盛んに研究されている。特別な超伝導体のみがトリプレット状態のクーパー対を生成すると考えられていたが、昨今の理論研究により超伝導体/強磁性体複合構造において、シングレット状態からトリプレット状態への変換ができると予測されている。その変換に必要な要素の一つに非一様な磁区構造の利用があり、我々はそのような磁区構造を実現するために磁壁を用いることに着目した。磁壁の中でも渦状の磁壁に超伝導電流を注入することで、シングレット状態のクーパー対がトリプレット状態へ変換されることが期待される。

本研究では、微細加工したNb(超伝導体)細線とNi-Fe(強磁性体)細線で構成された面内複合構造を用いた。Ni-Fe細線に切れ込みを入れることで生じた渦状磁壁をピン止めすることができ、その付近にNb細線を配置することで超伝導電流を注入させることができる。実験は、超伝導電流をNi-Fe細線に注入し、磁壁があるときとないときの電気抵抗を測定した。超伝導転移温度以下で、磁壁がピン止めされているとき、Ni-Fe細線部の電気抵抗が、磁壁がないときに比べてだんだん減少していく様子が観測された。ポスター発表では、この電気抵抗の減少が、超伝導電流の一部がトリプレット状態へ変換された可能性を示すことを他の要因を排除しつつ、議論した。議論の中で、漏れ磁場はどうなっているのか、といった構造上の質問に加え、生じる磁壁の大きさを計算してNb細線の効果的な位置を決めるべきだ、という今後の指針となる指摘も受けた。

3. 国際会議に出席した成果(コミュニケーション・国際交流・感想)

低温物理学に関する規模の大きな国際会議ということもあり、自身の研究内容を多くの研究者の方々にアピールすることができました。私の英語力の不足のため、論理展開がなかなか理解してもらえない場面もありましたが、最終的には納得していただけた印象です。他の方の発表を聴き、質問する際にも内容を理解してもらえない場面があり、もっと英語力を身につけなければならないことを痛感しました。それでも、時間をかけて多くの方々と議論することができ、今後の方針や新たな知見を得ることができました。また、口頭発表では、著名な研究者の方々が発表しており、基礎の面から最新の研究まで幅広く聴講し、モチベーションの向上に繋がりました。

最後になりましたが、本会議への参加にあたり、多大なるご支援を賜りました、一般財団法人丸文財団に心より感謝を申し上げます。

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