国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成28年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
吉田 宏輝
(横浜国立大学大学院)
会議名
38th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society (EMBC 2016)
期日
2016年8月16日~20日
開催地
Disney's Contemporary Resort, Orlando, Florida, America

1. 国際会議の概要

本会議はアメリカのフロリダで開催され、生体医療や医療機器、福祉機器等幅広い分野の研究に関して発表し、研究者同士での意見交換を行うことを趣旨としている。
発表は世界中から募集を行い、専門家による査読を通過したテーマについてであるため、世界最先端の研究について知見を広めることが可能な会議である。
学会開催期間の5日間、15部屋以上の発表会場にて朝から夜にわたり非常に多くの研究発表がなされ、学会期間中の午後に行われたセッションでは医療や生体機器のシステム開発に大きく貢献した著名人らによる特別講演がホール会場にて行われた。

申請者の参加した、手術用デバイスのセッションでは、申請者と同様の手術支援システムの研究から、手術器具の先端部の新規デバイスの開発、手術トレーニング装置の開発等の多岐にわたる発表が行われた。50 人ほどの聴衆が集まっており、活発な議論がなされていた。
また、申請者が聴講した口頭発表のセッションでは、手術用デバイスに限らず、リハビリテーション用器具の開発や義手義足の開発等の発表がなされていた。器具の開発メソッドや、開発した器具の評価方法等、異なる分野の発表でも非常に参考になる点が多くあった。

2. 研究テーマと討論内容

申請者が本会議で発表を行った研究テーマは、用手補助腹腔鏡下手術のためのマスタースレーブ操作の 5 指型ロボットハンドを用いた手術支援システムについてである。

討論内容は次のようなものであった。

他の研究で似たようなマスタースレーブで動作する 5 指型の手術支援用ロボットがあるが、違いは何なのかという質問があった。それに対して、確かに申請者らの研究とその研究ではロボットハンドを 5 指型で設計し、操作者の手の姿勢を追従させるマスタースレーブ制御を行うことによって直感的な操作を可能という特徴が共通しているが、申請者らの研究と、その研究では対象とする手術や目的とする動作が異なるため、ロボットハンドの大きさや出力可能な力などの設計要件が異なると返答した。

また、申請者らの開発しているロボットハンドは、手術に必要な手指動作のみを行うことを可能とするため、人間の手の自由度に比べ低自由度になるよう設計されているが、自由度の数としては 4 自由度のロボットハンドと同様であるため、わざわざ 5 指に設計した理由は何なのかという質問があった。それに対して、5 指で人間の手と同様の見た目であることによる操作習熟に要する時間の短縮や、手術時に現在使用されている手術用手袋が応用可能であることが利点であると返答した。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

本会議では、医療機器、生体医療に関する世界最先端の研究の発表が幅広い分野で非常に多く行われていたため、本研究にも技術を生かすことが可能なセンサデバイスや機構、制御方法など、得られる知見は非常に参考になるものであった。また、申請者の発表の際には、腹腔内で人間の手の代替として使用可能な 5 指型ロボットハンドの新規性や、従来の用手補助腹腔鏡下手術に替わる新しい手術の提案という医療的新規性から、手術器具や医用デバイスに精通した多くの研究者らと意見交換を行うことで、貴重な見解を得られた。さらに、他の研究発表に積極的に質問を行い、研究についての意見交換をはじめ、英語でのコミュニケーションという、海外での国際学会ならではの今後の人生において大変大きな経験を積むことができた。

申請者はこれまで海外への渡航経験もなく、英語でのコミュニケーションは中学、高校での英語の先生との会話程度であったため、実際に海外で英語のコミュニケーションを行うという事は極めて困難ではないかと考えていた。しかし、今回貴財団から国際助成金をいただき、国際学会に参加できたことで、想像していたよりも自身の英語がネイティブの方に伝わったことに感動し、より海外へ目を向けることに興味を持つことができた。このような貴重な経験を後押ししていただき、ありがとうございました。

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