国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成28年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
古里 洸一
(東京大学 大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻)
会議名
2016 Asian Wireless Power Transfer Workshop (AWPT 2016)
期日
2016年12月16日~18日
開催地
電子科技大学、成都(Chengdu)、四川省、中華人民共和国(China)

1. 国際会議の概要

2016 Asian Wireless Power Transfer Workshop (AWPT 2016) は近年注目を集めている「ワイヤレス電力伝送」に関する専門的なワークショップです。今年で2回目の開催となるこのワークショップは、中国の成都にある電子科技大学で開催されました。アジアの主に日本、中国、台湾、韓国などを中心とした国々から多くの学生が参加し、プレゼン発表を通じて技術交流を行います。日本の電子情報通信学会が母体の無線電力伝送研究会が主体となり運営がなされています。AWPTは私が参加した年で2年目であり1年目は台湾で開催されました。今回のワークショップでは46件のオーラルプレゼンテーションがあり、活発な議論がなされていました。

2. 研究テーマと討論内容

電気自動車に対するワイヤレス電力伝送のなかでも、走行路地中に埋設するコイルに焦点を当てた研究を行っています。ワイヤレス電力伝送技術は、その名の通りワイヤレスで電力を伝送するものであり、磁界共振結合方式という方式を使うことにより高効率で大電力を送電可能です。磁界共振結合方式のワイヤレス電力伝送にはコイルが送電側受電側ともに用いられます。本研究では、送電側コイルとともに用いられる共振コンデンサの安全性やコストに着目している。共振コンデンサには電力伝送中に極めて高い電圧が印加される場合があり、安全性に問題があります。また共振コンデンサは高耐圧かつ高周波特性が良いことが求められ、一般に高価です。本研究ではオープン型コイルを用いた、外付け共振コンデンサが不要な地中共振コイルシステムを提案しました。オープン型コイルは自身のもつ浮遊容量により自己共振が可能であり、本研究で提案した設計法により、電気自動車に対するワイヤレス電力伝送向けに認可されている85 kHzにおいて自己共振に至る地中コイルの設計を行いました。85 kHz帯でのオープン型自己共振コイルに関する報告はなく、新規性のあるものです。

形状として2層式角型スパイラルコイルを採用しており、その2層の間の幅や、角型スパイラルの線間距離を変化させることで、浮遊容量による自己共振周波数を任意の周波数に設定できることを明らかにしました。実際にコイルを作製し、85 kHzで自己共振に至るコイルの作製に成功しました。

この研究成果により、電気自動車対する走行中ワイヤレス電力伝送に用いられる地上コイルのコンデンサを撤廃することで、大幅なコストの削減につながると考えられ、ワイヤレス電力伝送の普及に大きな貢献をするものです。

ワークショップでは、大電力伝送の際の放熱の問題や製造上の精度の問題など、より実用寄りの質問を受け、有意義な討論を行いました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

自身のオーラルプレゼンテーションにより、自分の研究成果を共有することで、実用化する際の問題など、自身が着目していない観点からの質問を受け、自らの研究の発展性を議論できました。またランチやディナーでの他国の先生方や学生の方々と交流を深めることができました。

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