国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成27年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
岩井 陽典
(大阪大学 大学院基礎工学研究科 物質創成専攻)
会議名
2015 環太平洋国際化学会議 (PACIFICHEM 2015)
期日
2015年12月15日~20日
開催地
ホノルル、ハワイ、アメリカ

1. 国際会議の概要

2015 環太平洋国際化学会議 [The 2015 International Chemical Congress of Pacific Basin Societies (PAC CHEM™) ] はアメリカの他に、カナダ、日本、ニュージーランド、オーストラリア、韓国、中国の化学会が共同で主催しており、5年に1度アメリカのハワイ、ホノルルで開催されている。本学会のテーマは化学ネットワークとしており、その意味合いとして、環太平洋化学会に属し、産業、大学、研究機関、政府の研究所にそれぞれ所属する様々な科学者および技術者といった異なる部門間で化学に関する情報の伝達交流を促進し、積極的なコラボレーションを目指している。さらに、対象とされる化学の分野は幅広く、大きく分けて三つある。まず1つ目は基幹分野で、分析化学や有機、無機化学などが含まれている。2つ目は複合分野で、環境や生物、材料化学などが含まれており、筆者は材料化学で口頭発表を行った。そして3つ目は先端分野で、エネルギー問題や医療といった社会問題と化学をつなげる分野となっている。

上述するように化学全般の人々が一同に会するため、積極的なディスカッションが発表会場以外でも至る所で繰り広げられている。また発表形式としては、口頭発表およびポスター発表があり、発表件数は合わせて1万を超える。数の面でもわかるように、自身の研究のアピールの場という面に加えて、多くの意見を得ることが可能な場である。

2. 研究テーマと討論内容

筆者はエマルションの研究を行っている。エマルションはある流動性物質が他の流動性物質に分散した状態を示す。近年、マイクロ流体デバイスの発展により、液滴の多様な構造を均一に自己組織的に形成することが可能となった。特に筆者はコア部やシェル部に種々の機能性流体を用いることで、多種多様なWater-in-Oil-in-Waterエマルション液滴(マイクロカプセル)を作製し、その光学材料や微細構造形成材料、活性物質のキャリアとしての機能について研究を行っている。本国際会議では過酸化水素センサーとしての機能を有するコレステリック液晶(CLC)マイクロカプセルに関する研究について口頭発表で報告した。

CLCは分子配向方向にねじれを有し、らせん周期構造を形成するため、特定の波長域の光を反射する。そのため、蛍光色素とCLCを組み合わせたレーザー発振の研究が盛んに行われてきた。また、従来CLCは二次元平面状で用いられてきた。しかし、CLC液滴の三次元全方位レーザー発振の報告以降、曲面状のCLCにも注目が集まっている。筆者はCLCマイクロカプセルのセンサーとしての機能発現を目指し、蛍光色素の発光増強だけではなく、励起光を必要とせず、物質の化学反応により起こる化学発光についても同様の増強が起こると予想し、実際にコア部にルミノール物質を含んだCLCマイクロカプセルがルミノール発光を増強することを示した。環境学、薬学の分野などに用いられるルミノールを電気電子工学などに用いられるCLCと組み合わせた革新的なアプローチであり、活発な討論を行った。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

これまでも国際会議に参加した経験は数度あったが、すべてポスター発表であり、1対1での議論がメインであった。しかし、今回参加した環太平洋国際化学会議では初めての口頭発表ということもあり、発表日まで大きな不安を抱えていた。しかし、当日発表した際には、様々な国の研究者たちが熱心に筆者の研究発表を聴き、発表時間ぎりぎりまで質問も収まらなかった。英語でのコミュニケーションには不安を持っていたが、通常通りディスカッションすることができ、筆者の自信につながる発表となった。

またポスターセッションにも積極的に参加し、海外の研究者たちとディスカッションを繰り広げた。他の国際会議に比べて多くの国の人が参加するため、様々な考え方を有した研究者と交流することができ、さらに、そのディスカッションから筆者の研究についてもいいアイディアを得ることができた。

国際会議ではなかなか口頭発表をする機会に恵まれないが、今回初めて口頭発表する機会を得ることができ、筆者にとって非常に実りある経験となった。

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